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からっぽ  作者: てりやき
人間
32/95

三十一日目

 今日は遠足の日だった。が、しかし、雨のため延期になった。

 先生は、昔はこんぐらいの雨でも遠足行ってたけどなぁ、と呟いていたが、実際行っても問題なさそうなほど小雨だった。

 遠足だから授業の準備は出来ていないという人達もいたが、そんな戯言(たわごと)を無視して、一限の数学の先生はいつも通り授業を始めた。

 そのまま五限まで普段通りの学校だったが、六限の社会だけ、先生が授業の用意をしていないと言って、特別に自習になった。

 騒ぎすぎて怒られないように男子生徒たちが遊んでいる中で、先生は前の席の真面目に聞いてそうな人達に、社会の面白さを語り始めた。

「働き方改革って、知ってっか?」

 そう言って先生は、その五文字の言葉を黒板に大きく書いた。

 俺らは首をかしげた。一度くらいは耳にしたことがあったのかもしれないが、俺もみんなもあまり詳しくは知らなかったのだ。

「簡単に言うと、今までよりももっと快適に働けるようにしよう、っていう政策よ。細かく挙げていくと、例えば、労働環境の改善だろ? つまり、働く場所をどんどん良くしてって効率を上げよう! ってやつ」

 働き方改革の下に、労働環境の改善と書かれた。俺は、普通に授業をしている時のように、ノートにそれらを書き写した。

「他にも、日本人は働きすぎだから、働く時間を短くしよう! っていうのもあるな?」

 先生は喋りながら、「労働時間の見直し・短縮」とその下に書いた。

「さらにさらに、女性がもっと社会に進出できるように、給料を男女平等にしたり、男と同じように女も雇ってもらえるようにする制度、なんてものもあったりする」

 そこまで言って、先生は机をバンと叩いた。

 みんなびっくりしたようで、教室中が一瞬静かになった。数秒経ってまた、少しだけガヤガヤし始めた。

「俺は、今、日本の経済が悪くなってんのは、ほっとんどコイツのせいだと思ってる」

 コン、コン、コン。

 先生は、黒板の「働き方改革」の文字をノックした。

「まず、日本がアメリカに負けて、みんなボロボロになっただろ? そっから、今まで、どうやってこんな経済大国に成り上がってきたか。それは、国民全員が、『アメリカのような大国になりてー!』って思って働きまくってたからなんだよな。

 まあ、そりゃあ今と比べたら、大変だったし、色々不便だったけど、それでも、全国の父親ひとりひとりが、仕事一筋になって家庭を支えてたんだ。

 じゃあ、今の日本はどうだ?

 個人を尊重する代わりに、働く時間はどんどん減ってって、質も上がってるようで実はそんな変わってねーし。オマケに女性が社会に出たいとか言い出したから、晩婚化って言って、結婚とか出産のタイミングが遅くなってんだ。だから、今、子供の数がどんどんどんどん減ってるわけよ」

 その後も先生は、いつもの授業よりも熱くなって、日本の経済を語っていった。アメリカに次ぐ世界二位の経済大国だったのに、ドイツに抜かされて四位まで下がってしまったということ。GDP(国内総生産)という、経済力を測る指標のこと。そ先進国であることにあぐらをかいていたから、経済状況が悪化した今、国民がようやく政府の無能さに気づいたのだということ。

 どれもこれも、納得するには充分なほど、理にかなっていた。

 そして、気づけばチャイムが鳴っていた。

 俺は先生が教室から去ってから、楽しい時間というのは、あっという間に終わってしまうのだと思った。

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