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からっぽ  作者: てりやき
人間
27/95

二十六日目

 夢をみた。

 朝、登校すると、クラスメイトの頭が無くなっていた。

 首のところでスパッと切られていて、よく見ると、その断面に番号が書かれていた。

 席に着くと、桜と思わしき声が、

「おはよう! 0343」

と言って、俺のことを番号で呼んだ。

 振り返ると、頭が無い人間のメスが、親しげに俺の方に手を振っていた。

「おはよう」

 俺は、()()()()()、彼女に挨拶をした。

 彼女は頭が無くなった代わりに、オーブのような色のついた玉をそこに浮かべていた。人によって大きさは違うが、彼女だけでなく、他の人たちも同じように浮かべていた。

 おそらく、感情を表すものなのだろう。

 明らかに怒っている人は真っ赤だったり、楽しそうに喋っている人たちは緑だったり、喜んでガッツポーズをしている人は黄色だったりした。

 彼女はなぜか、喜んでいた。それも、かなり。

 頭の黄色が、水で少し薄めたような黄色ではなく、入れ物から出したばっかりのような濃い色をしていた。

「なんか、嬉しいことでもあったの?」

 俺は率直に聞いてみた。

 彼女は「えー」と言いつつ、顔の黄色を怖いほど濃くした。

「そっちこそ、嬉しいことあったんじゃないの? めっちゃ黄色いよ?」

 心外だった。

 自分ではそんなつもりなかったのに、知らず知らずのうちに、喜びが溢れ出てしまっていたらしい。

「うーん……」

 俺は、どう答えようか迷った。

 自分の感情(喜び)が、どこから来たものなのか分からなかったから。

 幸福感? 開放感? 充実感?

 いや、そのどれでもない。これはただ――

「快適、だなって」

 どこを見ても、不快な要素が無かった。

 人間が番号で識別されていて、感情が視覚化されている。

 ()()()()()()()

「なにそれ! アハハハ! あっ、一限体育じゃん。行こうよ」

 桜は、喜びに浸っている俺の手を取って、昇降口に走って向かった。




 外に出て、校庭に向かう途中で、俺は立ち止まった。

 校庭のそこらかしこに、何かが置かれていたのだ。

 あれは……

「生首?」

 俺の背中に悪寒が走った。

 何か、いやな予感がした。

「どうしたの?」

 桜の声が俺を呼んでいた。

「もうみんな並んでるよ?」

「なんか、生首が」

 俺はどうすればいいか分からず、とりあえず口を開いてみた。

「あーあれね。()()よね!」

 言われている言葉の意味が、分からなくかった。

 俺は固まったまま、首だけ動かして桜を見た。

「普通のヒトは、あれが無いと困るんだよ?」

 彼女は、俺を見つめて――

 口角を、上げた。

「アハハハハハハ!」

 なんでだ……

「アハハハハハハ!」

 なんで、表情なんてものがあるんだ!

「うわあああああああああああああ」

 ――そこで俺は、目を覚ました。

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