十八日目
今日は、家で映画を観た。
ほとんどは、小説が原作になっているものばかりだったので、もともと内容は知っていた。それでも、映画化された作品たちにはやはり、原作とは違った「面白さ」があるのだ。
例えば、原作をどのぐらい反映するのかが、作品によって全然違ったりするのだ。
ある作品は、過去の回想がメインストーリーになっている原作に、プラスアルファで登場人物たちの現在のストーリーを追加していた。新たな設定によって、原作には無かった伏線回収があったりして、映画として完成度の高いものに仕上がっていた。
もちろん、半分ぐらいの作品は、原作を忠実に再現したものだ。勝手に変更を加えて、原作よりいい作品に仕上げるというのは難しいし、それに、どんなに出来が良くても、納得出来ない一定数の原作ファンを怒らせることになるのだそうだ(テレビでそう言った話題をやっていた)。
俺にはあまり、理解が出来なかった。
いい作品、悪い作品というのも、それに対して「怒る」というのも、俺にはいまいちピンと来なかった。
単純に、小説の内容を二時間に凝縮するのだから、どこか一部はカットしなければならないのは、当たり前だと思う。
また、ある小説では闇市の雑多な感じを表現するために、「蒸し芋芋の粉団子握り飯大福」と、食べ物の名前を羅列していたりする。こういった、小説ならではの表現があったりする中で、小説と同じような面白さを求めるのは、ちょっと違うんじゃないかな、なんて思ったりもする。
同じ作品を二度楽しめるというのに、なんだか、人間はもったいない楽しみ方をしてるような気がした。
ゆうかから突然、「明日ヒマだろ? 桜をデートに誘え」と送られてきた。
デート。
それは、カップルが二人で遊びに行くことを指す。
まさか俺が、中学生になって二ヶ月経たないうちに、この単語と出会うなんて、想像もしていなかった。
とりあえず俺は、桜にデートの誘いの文章を送って、それから、デートのことについて調べてみた。
学生向けのオススメデート先で検索して、出てきたのは、
「遊園地、大型ショッピングモール、水族館、動物園、スポッチャ、etc…………」
などの地方の田舎に住む中学生が簡単に行けなさそうな場所。それか、
「カフェ、ボウリング場、カラオケ、繁華街、ゲームセンター、話題のレストラン、etc…………」
などの、俺が人生で触れてこなかった要素が入った施設。この二種類のどちらかだった。
そんな中、一つだけ、興味のそそられるものがあった。
「映画鑑賞」
ちょうど、新作の観たい映画があったところだったのだ。早速俺は桜に、映画館に行くつもりだと言うことを追加で連絡した。
「映画かぁ」
桜は、彼女は、一体どんな風に映画を観るのだろうか。
知りたい、と思った。