表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

日常 Daily

作者: やまなし

 朝起きると、ぼくは女の子になっていた。

 ぼくは巨大な喪失感に見舞われる。いままでの自分が、そっくりそのままなくなってしまったのだから当然だ。けれども、自分はここにいる。心と躰の不一致が、ぼくの心を激しく波打った。鏡を前にすると、この鏡に映る自分が、いまこのように思考する自分なのだろうか、という不一致を感じるのだ。世界が揺らぐような気がする。ぼくの顔は、なんとなく妹に似た顔立ちになっていた。それでも悩んでばかりもいられない。世界は個人の事情に関係なく進んでいくのだから。

 気を取り直して、さっさと身支度をすませる。ここで、ぼくはスカートに片足を突っ込んでいるときに不自然さを覚えた。どうやら、ぼくには感覚的に女としての記憶があるようだ。なぜなら、触れたことのない下着も、スカートも、迷うことなく着用できるのだ。いやいや、それ以前に、なぜ女性物の衣類があるのだろう。

 不思議なのは、それだけでない。

 大学に出勤して、講座の連中と顔を合わせても、誰もぼくが女に変身したことに気付かない。これでは、まるでぼくが初めから女のようだ。なにもかも、普段通り。もしかしたら、問題はないのかもしれない。人間は、それだけ柔軟な生き物、ということだろうか。

 しかし、ぼくにも憧れの女性はいる。彼女と同性になってしまったことだけが、消化できない不満である。彼女とステディな関係には、もうなれないだろう。この夢は、叶えられなくなった。これだけが、少々残念といえば、残念だ。ぼくは同性の恋人でも構わないのだけれどね。

 さて、明日に備えて、早めに寝よう。

 明日は、どんな一日になるのだろう。

 今日よりも楽しい一日であったら、すこしは、嬉しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ