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エッセイ

長編小説を書くって大変ですね、という話

作者: こまの柚里

 はじめてのかたもそうでないかたも、こんにちは。

 なろうで七年以上書いているハイファンタジーを、いまだに完結させられずにいる者です。

 ちなみに大長編ではありません。

 ただ、更新速度が極度に遅いため、こんなことになってしまいました。


 でも、こんな私でも物語の三分の一くらいまでは、サクサク執筆することができていたんです。

 ところが、その後は七転八倒。

 いまは後半に入っていますが、「筆が重くなるってこういうことだったのね」と実感する日々を送っています。


 このエッセイは、遅筆すぎる私がつらつら考えた「後半に筆が重くなる理由」を並べたものです。

 これはつまり「短編と長編はこんなところが違っていた」という気づきでもあるのですが、あくまで「私の場合」ですので、かるーく読み流してくださるとうれしいです。



理由1★ストーリーを決めるのに時間がかかる。



 ストーリーを決めずに書くなって話ですよね。短編だったら、そんなことありえませんから。

 ところが長編では普通にありえてしまいます……。

 といっても、まるで決めなかったわけではありません。大きな流れは最後までちゃんと作ってから、連載を開始しました。


 キャラが動くのにまかせる作家様もいらっしゃると思いますが、私の場合はすべて「物語ありき」です。

 キャラは物語に付随していて、勝手に飛んでいったりしません。ラストや要所要所のシーンも決まっています。

 でも困ったことに、大切なシーンとシーンをどうつなぐかについては、最初のほうしか決めていなかったんですね。これが決まらないとストーリーが成り立たないっていうのに。


 しかたないから書きながら考えてきましたが、後半になればなるほど制約が多くなり、矛盾も多くなり、すでに執筆した部分との齟齬も出てきます。

 自分の妄想がまちがっていたことにも、けっこうな頻度で気づきます。 

 嘘でしょう。あれだけしつこく妄想したシーンなのに、話と合わなくなってるなんて。

 そう心の中で叫びながら、何度構成を組み替えたことか。


 この頭脳作業に手間取って、筆が重いというより、まず筆を持つまでにすごく時間がかかるようになりました。

 そして、やっと持ってもそこでしつこく迷ったりするため、書くのがやたら遅くなりました。

 


2★登場人物たちの心情が重くなる。



 物語の最初は事件が起きていないので、キャラたちはおおむね気楽でした。

 でも後半は事件の渦中なため、心情的に相当追いつめられた状態です(私のハイファンはシリアス路線)。

 作者というのは、話を考えるときも書くときもキャラにシンクロするものです。なのでキャラが追いつめられると、作者まで酸欠に……。


 ただ、それが悪いわけではありません。だからこそ筆がのるとすら言える。

 酸欠だけど書くのがやめられないことも多くて、この状態はむしろ快感。ライターズハイをかみしめる時間です。


 でも。1で書いたように書きながら迷っている場合は、快感どころじゃないわけで。

 シンクロしているのに進まない。不安定な状態で同じ部分を何度も何度も考えて、もうパソコン前で倒れそう。

 当然、筆の進みも大変遅くなります。



3★世界が重くなる。


 

 物語の舞台は自分で設定するわけですが、作者だから舞台をよく知っているかというと、実はそうでもありません。

 書いているうちに、必要に迫られて設定を煮詰めることも多々あります。


 それを繰り返していると、上っ面しか見えていなかったものが、だんだんくわしく見えてくるようになります。二次元で見ていたものが立体的に見えてくるっていうんでしょうか。

 その世界の歴史や文化が、なんだか近づいてくる気がします。


 こんなふうに時間をかけて煮詰めることは、短編ではできませんよね。だからこそ長編では、短編にくらべて世界が深まり話も深まるわけですが……。


 これが、重い。

 あ、歴史や文化というのは、キャラたちの家庭環境とか生い立ちとかにも言えまして。

 設定を煮詰めるうちにめちゃくちゃ重くなってくる。ストーリーの中でではなく自分の脳内の話なんですけど。


 こちらも2と同じで、興が乗るととても楽しいんですが、悩んだり迷ったりしていると重みでつぶれそうな気分になってきます。そして当然、筆も重くなるわけです。

 

 

4★片手間に書けなくなる



 以前は片手間というか、隙間時間でも書けていました。

 執筆中にリアル日常の邪魔がいろいろ入っても、びっくりするほど短時間で作品に入り込むことができました。


 ところがいまは、上記1から3の理由によりまして、隙間に書くことが難しくなりました。

 たとえば、大切で大好きな本を読むときって、立ち読みじゃなく椅子にすわり、静かな場所でゆっくり読もうと思いますよね。

 それと同じ感覚。大切だからこそ、長く書いて愛着があるからこそ、きちんと向き合いたい。


 がしかし、そんなふうに思っていると、なかなか時間がとれないのです。リアルの波が押し寄せている中で、自分時間をとるのは大変。

 筆も遠のいてしまいます。



 さて、よっつの理由をあげましたが、残るふたつは悲しい理由なのです……。

 説明しますね。



5★作品に自信が持てなくなってくる。



 要するに「この小説は面白くないんじゃないか」と思えてくるってことです。

 自分には面白いけど、他人が読んだらつまんない作品にちがいないと思えてくる。最初は面白かったはずだし自信もあった。でも実はほかの人には、全然面白くないのでは……。


 この考えは悲しいです……。大切で大好きで必死に書いている小説が、つまんないものに思えてくるなんて。


 でもこれ、実は錯覚によるところも大きいんですよね。

 作者は物語のあらすじを知っていて、何度も何度もそれを味わっています。

 だから、もはや新鮮味なんてないのです。予想外の展開が待っていても、作者には全然予想外じゃないんですから。

 だから、つまんなく思えてくるんじゃないかと。


 あ、希望的観測かな?

 でも、自作をつまんないとは思いたくないから、そういうことにしておきましょう。 


 それと、長編は短編とちがい、見せ場までのつなぎのシーンが長くなりがちです。

 たとえば説明シーンとか単なる移動シーンとか。短編だとくわしく書かずにすむことを、長編だとしっかり書かなきゃいけないことが多い。


 そういう部分を適当に書くと作品の質が落ちるので、ちゃんとしなきゃと思うんですが……。

 でもそういう部分って、書いていても楽しくないんですよね。

 なので、そこに当たったときに悩んでしまうとピンチです。筆がとっても重くなります。



6★エネルギー不足に陥る。



 最後はやはりこれでしょう。

 エネルギー、すなわちPVポイント感想などの反応が得られないことによる、ガス欠。なろう作家の宿命ですね……涙。


 最初は自家発電でいけるのです。どんなにPVがつかなくても感想が来なくても、書く楽しさが上回っているうちは自分だけでも平気です。

 私の場合、はじめて連載の感想をいただいたのは、完結して一年以上経ってからでした。

 それでも楽しく執筆できていました。ブクマされないストレスを、執筆で晴らしていた感じですね。


 それがいまでは……。

 いつも構ってくださる相互の皆さま、本当にありがとうございます……!


 投稿時が命だから、投稿速度が遅くなると当然ながらPVはつかない。

 もちろん感想も来ない。ブクマもふえない。

 作品が長くなればなるほど、ご新規さんが遠のいていく。

 どころか、なんならブクマ減る。

 するとガス欠で筆が重くなる。

 補充したくて、よせばいいのにカササギさんを見る。

 がしかし、真っ白なのでますます筆が重くなる。

 重くなると投稿が遅れ、遅れると……。

 このループはネット小説の宿命かもしれませんね。



 ふう。



 さあ、これでだいたい吐き出しました。

 どうしてこんなエッセイを書いたかというと、実はきのう連載最新話を更新したのですが、計算違いで予定していた話の半分までしか書けなくて……。

 たくさん考えたはずなのに、計算違いがわからなかった自分に、ちょっと絶望いたしました。


 で、長編ってほんと恐ろしいわと思い、そのショックを癒すため、こんなエッセイを衝動的に出してしまったのでした。


 あっ、最後にすごく大切なことを書いておきますね。


 このエッセイは「筆が遅くなる理由」を並べたものです。

「筆を折る理由」ではありません。

 書くのをやめる選択肢は私にはありませんので、ご安心くださいませ。


 さて、気がすんだところで、次の更新分の準備をしようかな。

 読んでくださって、どうもありがとうございました。






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― 新着の感想 ―
ほぼ短編しか書いていないのに、心当たりがあることばかり書かれていました(´;ω;`)ナゼカナ… とくに4・5・6…( ; ; ) 共感しました。 ありがとうございました。
ふらふらとさ迷いたどり着けば、納得の嵐のエッセイがこんなところにw こうして見ると小説を書くって大変なことなんだな~と思います。長編だと特にモチベーションの維持が大変ですよね。わかりみが深い……。 …
[良い点] ∀・)要点をまとめて心情を素直に吐露されたというエッセイだなと思って読みましたが、多くのなろう作家さんが共感をされてますね。僕もところどころですごく共感しました。「重くなる」っていうのは確…
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