混迷するハムレット
リュドシエルが乗る車は、サターンの裏側に回るとゲートが開き中へと入っていく。
「あの……会長、一体どちらへ向かって居るのですか?」
気になってセラはリュドシエルに問い掛ける。
「勿論、我がサタン商会が誇る研究所だよ。君なら……是非にも能力を生かせると思ってね」
笑ってリュドシエルが答え、ローザは静かに目を細めた。
……研究所……?
セラは内心驚きを隠せない。
その様子を監視カメラでクオン達はモニターチェックしていた。
「ターゲットのスパイ、裏ゲートよりラボ内へと入りました」
「このまま、技術研究室へ誘導します」
常に監視している所員がクオンに報告する。
「一般職員とディーヴァクルーとの入れ替え完了しました」
「では、続けてセラの動きを見張りなさい」
所員にクオンは頷いて指示をした。
「っ!?クオン様、オフィーリアより緊急通信が入りました!!」
「……何事です?直ぐに繋げなさい」
焦る所員にクオンは僅かに表情をしかめて命じた。
「通信繋げます!!」
所員の声と共に、目の前にある巨大モニターに青年が映る。
『クオンさん、ちょっとヤバいと思って通信入れました。先程オフィーリアで捉えたこの映像を見てください』
直ぐに映像が切り替わり映し出されたのは人型の黒い機体だった。
「……これは……トマルフの主力部隊カオスの……ガゴイですね。確か構成人数は8人、その内の6機と言うことは……明らかに戦闘行為する気ですか……」
冷静に状況を考えてクオンは目を細める。
『連中、どうやらハムレットを攻撃するの間違いないですね。今ならオフィーリアと試作機デビルシリーズで落とせますがどうします?』
「……いえ、先ずは会長に聞かないと先走りで行動するのは危ういです。直ぐに会長に知らせましょう」
青年にクオンは答えると、右耳に付けてる通信ピアスを起動させた。
「ん?」
丁度、リュドシエル達が車から降りて歩いていると、左耳に付けてる通信ピアスが反応して目を丸くする。
「どうした?クオン」
『会長、トマルフのカオス部隊が率いるガゴイ6機がハムレットに向かってます。先程、オフィーリアより通信が入りました。今ならオフィーリアと試作機で落とせると言ってますが如何なさいますか?』
リュドシエルが聞くとクオンが答えた。
「……ふむ、オフィーリアでも問題無いが……試作機はまだ実戦に導入するには早いな」
顎に手を当てリュドシエルは考える。
……試作機……?
セラは目を丸くした。
「一般人や他の商船、非戦闘員をシェルターに避難誘導、それと同時にディーヴァとエンジェルシリーズ3機、僕のサタナエルの発進準備を頼む。ハムレットで迎え撃とう」
『承知致しました』
リュドシエルに命じられ、クオンは答えると通信を切った。
「ハムレット内で侵入者を迎撃します。ディーヴァ、エンジェルシリーズ3機、会長の機体の準備と同時に地上の非戦闘員をシェルターに避難誘導して下さい」
「「「了解しました!!」」」
クオンに命じられ、所員は直ぐに行動へ移る。
ハムレット内で突然警報が鳴り響くのだった。