第一戦闘配備
「……そう言えば、今日スパイをこっちのラボに誘導する日でしたっけ?」
ずっと黙っていた男性研究員が問い掛ける。
赤茶髪の髪で短髪、黙っていれば見目の良い青年だが、たまに余計な一言が多くて皆に怒られる。
ムウタ・アヤナツキ(20)。リュージュの同僚で幼なじみ。秘匿計画に参加する研究員。
「えぇ、そうです。私の代わりにローザが会長に同行してくれてますが……」
困ったように青年は答えた。
「ローザさんとなら……激しく兄はやりますね。ローザさんM男ですし……」
「あの女装野郎、やはり一度シメときますかね……」
リュージュがズバリ言うと、青年は笑顔で怒る。
「セラが動き次第、此方も動きますからね。ムウタもリュージュさんもメンテナンスは済んでますか?」
青年は表情を引き締めて問い掛ける。
「銃弾でも爆弾でもどんと来いです」
「出来るだけ痛いのは嫌なので、周囲と同化、又は背景に徹してます」
ムウタはヤル気満々に答え、リュージュは嫌そうに答えた。
「なら安心ですね。このラボをネズミの囮にします。ディーヴァの搭載する各機のパイロットは勿論、クルーも含めて第一戦闘配備です」
「「ラジャー!!」」
青年の命令に、二人は敬礼して返事をした。
クオン・カイバラ(25)。サタン商会会長付き第一秘書でリュドシエルの右腕。
クオンは二人に頷くと、研究室を後にした。