一枚岩じゃなさそうですね
「……妙な係員だったな。一介の職員の癖に俺達を歓迎すると言ってたぞ」
赤い髪をオールバックにし、顎髭を生やした青年、ビリアームズは後ろに振り返って首を傾ける。
「考え過ぎですよ、船長。どうせサタン商会共通の通常サービスですって」
少し背が低く、緑色の髪の青年が苦笑して言う。
「ですが、確かに妙では有りますね」
桃色の長い髪を一つに結わえた青年が目を細めた。
「何つべこべ言っていやがる!俺達の目的忘れやがったのか!?」
そこへ茶髪の男が怒鳴り付ける。
「確かに【ウルフズ】の中ではビリアームズが上だが、階級は俺様の方が上だ。セラの情報を確認次第、俺達は行動に移るのか選択を迫られる。くだらん考えは捨て、今は目の前に集中しろ」
スキンヘッドの男が偉そうに言うと、茶髪の男と共にさっさと去っていく。
「……感じ悪いですね。元々はそっちの【カオス】がセラに無理を言って始めた作戦の癖に」
緑色の髪の青年は不満そうに言う。
「……おい、リムト。仮にもスッカ大尉は上官だぞ?口を慎め」
ビリアームズは呆れた顔をしてリムトに苦言をして嗜める。
「分かって居ますけど……これはあまりにもおかしいですよ。俺達は実働部隊の中でも裏で工作するのが本来のやり方です。なのにわざわざ潜入させるなんて不自然です」
それでもリムトは止まらなくて文句を言う。
「私達ウルフズはトマルフに属していても、総司令官に自由な判断で動けるように権限を与えられている。大方、私達を邪魔に思ったトマルフ全体の策略か、陰謀で嵌められたのだろうよ」
桃色の髪の青年が苦笑して肩を竦めた。
「トワもそう思うか?俺もキナ臭いとは思って居たが……セラから連絡が入り次第、一度あの二人と話し合いをしてみる。事と場合によっては粛清も視野に入れろ」
「「了解」」
ビリアームズにリムトとトワは返事をした。
だが、三人は気付いて居なかった。
至る所に仕掛けられた監視カメラを通して、全て見られていることに……。
「ふーん?トマルフも一枚岩じゃなさそうですね」
白衣を着た橙色の髪を一つに結び、幼い顔立ちの少年は思わずモニターの映像を見て苦笑する。
「まあ、そう言ってやるなよ、ジェイク。どの人種もどの勢力にだってやっかみや、下らん嫉妬、どうでも良いプライドを持つ人種が存在する。此処で【ウルフズ】を纏めて一網打尽に出来るなら僕達が有利になるのだからね。このチャンスは生かさなければならんよ」
紫色の髪の青年は、苦笑して言うと座っていた席から立ち上がる。
「で?会長、セラをどう動かしますか?」
悪戯っぽく笑ってジェイクは問い掛けた。
「この僕が直々に声を掛けてみよう。それに上手く食い付けば良し、食い付かなければまた何か手を考えねばならんが……」
中々煮え切らないが、半々の望みを託して紫色の髪の青年は僅かに苦笑する。