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品定めと狸の目と少年

長く続いた大会議を一度中断し、リキュウは別室で休憩を取っていた。


「リキュウ様、冷茶をお持ち致しました」


「ありがとうございます」


身の回りの世話をする側付きからグラスを受け取ると、一気に飲み干してリキュウは一息を着く。


「美味しいですね……冷えたアイスティーは渇いた喉に染み渡りますよ」


微笑んでリキュウは側付きを褒めるが……


「私には勿体無い御言葉です。……慢心する事無く精進致します」


側付きの青年はリキュウに言うと、一礼してリキュウの前から去っていく。


……ふむ確か……彼は元軍人の奴隷で今は侍従見習いでしたね。真面目なのは良いですが……固過ぎる性格は頂けない。無事に勝利した後は……彼をリュドシエルの相手にしましょうか……。


リキュウは薄く微笑み、青年の後ろ姿を見詰める。


「あぁ……リキュウ会長、此処に居たのですね?会議室に姿が見えなかったので探しましたよ」


「……これはこれは……グラフォス会長」


ドアを開け、突然部屋に入って来た人物ダニエルに対し、リキュウは笑みを浮かべる。


「ノックも無しに部屋に入るのは……些かマナー違反では?」


目を細めると、リキュウはダニエルに苦言を呈した。


「それは申し訳ありません、何せ……リキュウ会長……貴方の姿に疑問を感じて気になったものでして……」


悪びれた様子もなく、ダニエルは直接本題に切り込む。


「私の姿に疑問を?意味が分かりませんね」


敢えてリキュウはとぼけてみた。


「貴方の姿は……僕より歳上の筈なのに関わらず、20の頃から変わって居ない。……そう、まるで年齢の時が止まったように……」


「……考え過ぎですよ、私は見た目より若く見えます」


ダニエルの言葉をリキュウは真っ向から否定する。


「それで僕は思い出したんです。5年前にマジェスタで亡くなったマキナ博士の師である……ファウスト・クレイム・カイバラ博士も同じ研究をしていた事に……。確か……リキュウ会長はカイバラ博士の元愛人でしたね?その若さも彼の研究なら辻褄が合う」


ダニエルはリキュウに言い放つと、自信に満ちた笑みを浮かべた。


「……やれやれ、しつこく嗅ぎ回る狸は嫌いなのですがね……」


苦笑いしてリキュウは肩を竦めると、僅かに殺気を放つ。


「僕の考えでは……恐らくサタン商会とメイシェン商会の背後にカイバラ博士が居るのだと思います。……でなければモニターで見た機体の説明が付きません」


それでも、ダニエルは怯まずに切り込んだ。


「そこまでだ……グラフォス会長」


突然、視界が歪んだかと思うと、何もないリキュウの背後の空間から、幼い金髪の少年が現れてダニエルに真っ正面から言い放つ。


「私はあくまで理論を纏めたに過ぎんよ。計画を完成にまで導いたのはマキナだ。……リュドシエルとリキュウはマキナのデータを元に更に計画を進化させただけ」


金髪の見た目12歳くらいの少年は、白衣を着ておりダニエルに答える。


「まさか……貴方は……カイバラ博士……!?」


思わずダニエルは目を見開いて叫ぶ。


「グラフォス会長、人には越えてはならない領域と言うのがあるのだよ。……その線を越えた先に待つのは……」


笑みを浮かべた少年は、ダニエルの周囲に無数の雷玉を出現させる。


「……なんだ……?この雷の球は……!?」


ダニエルは放電する雷玉を見て驚愕し、冷や汗を掻きながら周りを見回した。


「死だ……ライジングインパクト(爆発する雷)


一言だけ少年はダニエルに告げると、指を鳴らした。


次の瞬間、ダニエルの身体に雷玉が容赦なく当たっていく。


「がああぁぁぁっ!?」


身体の内側から、次々と雷玉が当たる度に内臓が放電してダニエルは悲鳴を上げる。


最後にダニエルは雷玉で心臓が放電し、目を見開いたまま口から煙を吐いて絶命して仰向けに倒れた。


「相変わらず……痛め付けて殺すなんて悪趣味ですね」


呆れた顔をしてリキュウは少年に嫌みを言う。


「こいつは私をこそこそ嗅ぎ回っていたしつこいら商人でね。……ついつい苛ついてしまったのさ」


苦笑した少年は、ポケットから注射器を取り出すと、ダニエルの首裏に打ち込む。


一度だけダニエルの身体が痙攣すると、止まった心臓が再び動き出した。


「ふむ、異種族化蘇生成功か?……こいつは美しい顔をして居るからね。私の研究所で躾るとしよう」


満足そうに少年は微笑み、リキュウに振り返って腰に手を当てる。



ファウスト・クレイム・カイバラ(58)。サタン商会所属の主任研究員で【異種族化計画】の第一人者。マキナの亡き後、計画を引き継いで進化させた。

元地球連邦軍の技術開発責任者でもある。



「それじゃあ、私は研究所に戻るとするよ」


ダニエルを宙空に浮かせると、ファウストはリキュウに背を向ける。


「……二人の御子息と、リュドシエルに会って行かれないのですか?」


思わずリキュウは椅子から立ち上がると、ファウストに問い掛けた。


「……私は元地球連邦軍の開発者であるし……間接的にザガックでマジェスタを襲ってマキナとルーチェを殺したことも間違いない。……罪を犯した私にはあの子達に会わせる顔なんてないさ」


リキュウに振り返る事も無くファウストは答えると、空間を歪ませダニエルを連れて姿を消す。



「……会わせる顔がない……ですか。……ですが、最終的にマキナとルーチェを殺したのはガゴイです。……ザガックもマジェスタの攻撃に加わっていましたが……ファウスト、貴方の責任ではないですよ。……悪用されるのは想定外なのですから……」



悲しげな表情でリキュウは呟くと、再び椅子に座る。


「……ファウストも、私も5年間を掛けてお膳立てをしたのです。リュドシエル……必ず勝ちなさい」


虚空を見詰め、リキュウはリュドシエルに向かって言葉を掛けるのだった。









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