……同情しますね……
灰色の堕天使が翼を広げた形状の戦艦では、メインブリッジにヒイラギが一段高い席に黒い軍服姿で座っており、オペレーターや技術官、操舵手を始めとする青年達が同じ軍服姿で席について居た。
「ジュリエット、目標高度まで浮上完了」
「ターゲットのガゴイ2機、当艦から撤退して行きます」
次々にオペレーター達が宙空に浮いたタッチパネルを操作し、メインモニターの映像を切り換えながら報告する。
「会長からは可能であれば捕縛しろと命じられている」
席から立ち上がると、ヒイラギはモニターに映るガゴイ2機を睨み付ける。
ヒイラギは商会長付第四秘書であると同時に、ディーバ級三番艦ジュリエットの艦長。
「ライトニングスパイダーアームなら、射程距離も広範囲なのでガゴイ2機に届きます!!」
ヒイラギの後ろに立つ青年が進言した。
緑色の髪で腰まである長い髪を一つに結わえ、中世的な顔立ちの青年はモニターを確認してヒイラギに振り返る。
リカルド・マーキュス(23)。ジュリエットの副艦長でヒイラギの右腕。
「よし、このままジュリエットはガゴイ2機を追跡する!!全速前進!!ライトニングアームはガゴイ2機を完全にロックオンしたと同時に発射しろ!!」
「了解!!」
ヒイラギが命じると、直ぐにリカルドが返事をしてオペレーターと共に技術官にも指示を飛ばす。
『くそっ!!あの戦艦追って来る!!』
『動揺しては向こうの思う壺だ!!何としても振り切るぞ!!』
クプが焦り、カンはそんなクプを叱って宥めるが……
『振り切るって言っても……今が最大出力なんだぞ!?』
『っ……!!だが、此処で諦めても仕方無いだろう!!』
弱音を吐くクプに、カンが叱り飛ばす。
……だが、そうこうしているうちに、ジュリエットがガゴイ2機に追い付き視界に捉えた。
ジュリエットのメインモニターに、ガゴイ2機が映し出され、同時にロックオンされロックオンを知らせる音がブリッジ内に響き渡る。
「ガゴイ2機、完全にロックオンしました!!」
「ライトニングスパイダーアーム、放てぇ!!」
オペレーターが叫ぶと、間を置かずしてヒイラギが号令を掛ける。
ジュリエットの前方左右に設置されていた格兵器が開くと、一気に電流を微弱に帯びた数十に及ぶスパイダーのアームがガゴイ2機に降り掛かった。
『なっなんだこれっ!?』
突然ガゴイの機体に数十ものアームが取り付いて絡み、クプは冷や汗を掻いて焦る。
『くっ!!ブースターの出力を上げても振り払えない!!』
同じく数十ものアームに取り付かれたカンも、出力を上げて逃げようと試みるが出来ず混乱する。
「ガゴイ2機にライトニングスパイダーアーム命中確認しました」
「電流を流せ、パイロットが死なない程度にな」
オペレーターの言葉にヒイラギが頷くと命じる。
「電流を20mAまで送流開始!!」
「了解!!20mA送流!!」
リカルドが叫び、技術官が送流した。
『うわああああああ!!』
『あああぁああぁっ!!』
ライトニングスパイダーアームを通して、クプとカンは電流を浴びて激痛に叫ぶ。
「送流中止します!!」
再び技術官が送流を中止する。
クプとカンはぐったりし、意識を失うと同時にガゴイのメインカメラの光も落ちた。
「ガゴイ2機の機能停止を確認しました」
「回収しろ、パイロットも捕縛する」
オペレーターにヒイラギは命じると席に座る。
「……ですが、プラド艦長……連中は妙ですね。ジュリエットを視認した時点で攻撃を仕掛けてくる筈ですが……逆に背を向けて逃げるばかりで……とても正規の軍人が取るべき行動とは思えませんでした」
疑問に思ったリカルドがヒイラギに進言した。
「……あの2機にはあらかじめ武装らしい武装が見られなかった……。……先程、我々を襲撃した時も北7番港で破壊行為をしていたのはサタンタワーに向かった4機で、同じ2機は後方で待機していただろう」
目を閉じたヒイラギはリカルドに淡々とした口調で答える。
「……まさか……パイロットとは名ばかりの新人軍人と言うことですか?……ろくに実戦も出来ない新人を連れて軍事作戦を展開するなんて……無謀にも程があります。自殺行為の何物もでもありませんよ」
驚愕して目を見開いたリカルドは思わず動揺してしまう。
「……彼等は恐らく愛玩兵士だ。……元々、ワッカとスッカが率いるカオス部隊は我々が宇宙連邦軍に居た頃から良い噂など聞かなかった。……己の性欲の捌け口にする為、若い兵士を犯して調教するペットにでもしていたんだろう」
再び目を見開いたヒイラギは、苦々しく答える。
「戦場で昂った欲を満たす為とは言え……同情しますね……」
リカルドも苦々しく言うと、下に俯いて拳を握り締める。
「それが戦場なのだから仕方無いさ、会長に通信を繋げてくれ」
「了解しました!!」
肩を竦めてヒイラギはリカルドに言うと、オペレーターに命じるのだった。




