ネズミは早い内に駆除するに限る
一方、スッカ達と別行動で地下を目指していたワッカは、手榴弾で重厚な扉を破壊し中へと侵入する。
「っ!?」
ワッカは目の前に現れた光景を見て思わず絶句した。
そこは地下格納庫になっており、今まで見たことの無い黄色い巨大な戦艦があった。
それだけではない。
他にも見たことの無い人型機動兵器も多数ある。
メカニックだろうか、作業員達が慌ただしくメンテナンスをしている。
「……何だよ……これ……!?」
「ワッカさん!!こっちにも人型機動兵器がっ!!」
「くそっ!!噂は本当だったのか!?」
続けて部下からの報告にワッカは頭が痛くなる。
「お前らも散らばって調べろ!!俺も戦艦を調べる!!」
「「「「「「はっ!!」」」」」」
ワッカに命じられ、部下達も散らばって行くのだった。
……おいおい……誰か嘘だと言ってくれ……情報はガセネタじゃなかったのか?
……サタン商会が……まさか……本当に開発していたなんて……悪い冗談でも何でもねぇぞ……
「っ!?」
溜め息混じりにワッカが後ろに振り返った瞬間、暗闇から現れた男にワッカは重厚をこめかみに突き付けられ息を呑む。
「おっ……お前は……サタン商会の……リュドシエル……!!」
震える声でワッカはリュドシエルに叫ぶ。
……どういう事だ!?気配なんて全くしなかったぞ!?
内心でワッカは混乱していた。
「よくもまぁ、あからさまな罠に自ら飛び込んで来た様だね。君達が起こした5年前の事件、私は一度も忘れたことなど無かったよ。それから5年掛けて全ての準備をして来た。その実力を発揮するこの時をね」
笑ってリュドシエルがワッカに言うと、ワッカの後ろからローザとクオンが出て来た。
「……準備?……実力……だと?……あの計画は……俺達が潰した筈だ……」
……ガキが居る幼稚園を俺が吹っ飛ばして、兄貴が自宅諸とも女を吹っ飛ばした。
……宇宙連邦の穏健派と、地球連邦の穏健派をコロニー爆発に巻き込んで始末した。
……だから俺達強硬派は任務に成功した筈なんだ。
……こんなの……知らねぇ……何なんだ?こいつから俺に向けられるヤバい殺気は!?
ワッカは内心で振り返りながらも、リュドシエルに戦慄する。
「今から死ぬ君には知る必要の無い事だ。……消えたまえ」
冷たい瞳でリュドシエルは言い捨てると、引き金を引きワッカの脳天を撃ち抜いた。
「予定より少し早いが……ネズミは早い内に駆除するに限る。増え過ぎてしまうと些か不愉快だからねぇ……」
浴びた返り血をクオンにハンカチで拭いて貰うと、リュドシエルは目を細めて言い放つ。
「残りのネズミ駆除はお任せを……」
ローザはリュドシエルに一礼すると、その場から消えた。