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閑話ある女性研究員の最期Ⅰ
ラグナロク西暦835年4月1日。
サタン商会が保有する中立コロニー『マジェスタ』には、戦火を逃れる為に移住してきた人々が住んでいた。
「ママ、パパとはいつ会えるの?」
二歳になった娘は、夫譲りの紫色の髪をツインテールにして結び、保育園の制服に着替えると、不思議そうな顔をして私に聞いた。
「そうね、パパは今お仕事で忙しくしているけど、今週の土曜日には会えるわ」
私は少し屈むと、娘と目線を合わせて答える。
「本当!?やったぁ!!ルーチェね、パパと沢山遊ぶの!!」
娘のルーチェは嬉しそうにはしゃいだ。
「ふふ、きっとパパも楽しみにしていると思うわ」
ルーチェに私も笑って言うと、保育園のバスが迎えに来た。
自動ATバスは、独立して動き各園児の家に迎えに来るから便利。
これも皆が住みやすいようにと、愛する夫がサタン商会を上げて整備してくれた賜物ね。
「ママ!!行って来ます!!」
「はいはい、夕飯はルーチェの大好きなオムライスを作るから楽しみにしててね」
「はーい!!」
いつもの何気ない会話、バスから手を振るルーチェを私は自宅から見送った。