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ともだち

 エトナはこの町では目立ちすぎるカルブに自分の上着を脱いで着せた。すっぽりフードまでかぶせてから、手を引いて歩いていく。


「なぁ、カルブ。おまえさんはなにもんなんだ?」


 カルブと一緒に町を歩くエトナは上機嫌だ。すこし野蛮な言葉づかいをしているが、子供であることに変わりはない。


「どわーふ?」


「チガイマス」


「ふーん。エトナとおなじくらいのおおきさだろうが?」


「ナニゾクデモ アリマセン」


「かぞくはいるのか?」


「オリマセン」


「あのおんなたちは、ともだちか?」


「……ユウジンデハ アリマセン」


「へんなの」


「ヘン デショウカ」


「かぞくでもともだちでもねえってのにいっしょにいるってなぁ、へんじゃねえか」


「…………」


「なぁ、おれがともだちになってやってもいいぞ?」


「テモダチ」


「ああ。この町にはおれとともだちになるってぇこどもはいねえ。あそび相手がいねえってもんよ」


「キンソクジコウ ニハ テイショクシマセン リョウショウシマス シカシ 『テモダチ』ノヤリカタハワカリマセン」


「あーん? そりゃあ、あそんだり、はなしたり。ほかには……んー…… ともだちってのはどうやるんだろうな?」



***



「攻める、だ?」


 ラスターの提案に訝しむグウェーブとノーゲル。


「守るということに囚われてしまっているから、勝てないのかもしれません」


「どういうこった! 俺達ドワーフ族はお前さん達ヒューマンよりよっぽど頑丈だぞ?」


「それでも、攻められ続けたことで今は綻んでしまっています」


 少年の言葉に屈強なドワーフは苛立ちを隠せていない。しかしなおもラスターは続ける。


「敵は強力な攻撃力と、強靭な外骨格があるうえ、どこから来るかわからない」


「そうだ! だから困っとるんじゃろうがい!」


「本当にそうですか? 本当にどこから来るかわかりませんか? ノーゲルさん。あなたを襲ったおけらはどこから来たんです?」


 ノーゲルの顔を見ず、虚空を見つめている。きっとラスターは会話しながら、喉に引っかかっている解を探しているのだろう。


「壁から、突然飛び出てきやがるんだ! あの虫ケラどもは! 穴を掘ってな!」


「壁の……穴から」


「…………」


「岩や土の中で、突然生まれて、なんだかよくわからないままドワーフの町を襲うのでしょうか?」


 ドワーフたちとて本当に穴から来ることを失念していたわけではない。

 穴から来ることが分かっていても、それに対して何かできると思えなかったため、選択肢から外してしまっていた。無意識に。


「穴から来るということは、穴をたどれば総本山にたどり着けるのでは。彼らは巣を作らないのですか?」


「…………」


「僕はこう考えています。虫けらはある程度の統率――同じ目的を持って襲い掛かってくる。次々に」


「そうだ! なんの目的か知らねえが、そう期間を開けずに次々襲ってくるんだよ!」


 襲われて命を落とした仲間を想っているのだろうか、グウェーブは怒りとも悲しみとも言えない表情で声を上げる。


「なぜ、一気に襲ってこないのでしょうか」


「…………ッ!」


 あれほどの攻撃力、瞬発力、外骨格の防御力。

 それらがあれば、目的はなんであれ、一気に攻め立てれば済むことじゃないか――そう言っている。


「向こうも戦力の増産に追いついていないのでは、ないでしょうか。一気に攻めることが可能ならば少しずつ攻める必要はありません」


「ラスター、それなら今が」


「そうです、カナメさん。増産が間に合わないのであればこちらから攻めるよい機会なのでは、と――」


「言いてえことは分かった……だが、一本道のあの穴で、虫けらに対面したら戦士でもねえ俺たちでは勝ち目がねえ」


「狭い一本道なら、やたらと有利な武器を知っています」


 そういってラスターはカナメを見る。


「”銃”、ってことだな?」


「ええ……敵は避けられない、と思います。着弾までに急に横穴を掘って躱す時間などはないはず」


 銃はラスターの持つもの以外まだこの世界に生まれてきていない。

 広まれば戦争の手助けとなるだろう。きっと、ではない――必ず――だ。

 前世の現代ほどに高性能化すれば魔術師でも、剣士でもない人間でも簡単に他人を殺せる。


「それなら、こういうのはどうだ? あまりに強力な武器の製法を教えるが、この戦いが終わったら、全部溶かして鍋にでもする。まあ、作り方が分かったら元も子もないから、教えるのはおっちゃん一人。作るのもおっちゃん一人。それに有用な作戦がある」


「銃ってなぁ、その兄ちゃんの火薬を使う弩の事か」


「そうです。躱されてしまいましたが、外骨格に傷を与えることはできました。ユーミさんの殴打より威力を上げ、僕の銃より精度を増す。それでもカルブの飛ぶ右手ほどの威力までは必要ないと思います」


「それじゃあ、まるで攻城武器だな。そんなもの人間に……」


「そうです! 人間に扱える必要はありません。それを扱うのは力自慢の、ドワーフですからね」

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