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第9話 ズムスタでの遭遇

 9月27日。カープはズムスタで中日ドラゴンズと戦った。前日の試合に敗れてこの年の優勝の望みは消えたが、Aクラス入りは確定した。3位になるか2位になるかの攻防になっていた。

外野2階席の「カープパフォーマンスシート」では、守と拓人が一緒に観戦していた。拓人は福岡での学会の帰りに広島に立ち寄り、守を誘って一緒にカープ観戦していた。パフォーマンスシートの雰囲気に飲まれ、2人は声を張り上げていく。そしてふと気付いた。

「おや、悠斗君じゃないか?」

守と拓人の斜め前の席には、悠斗と詩織がいた。守と悠斗は思わぬ奇遇に驚いた。

「守さん、お久しぶりです」

「お隣は彼女さんかの?」

守と詩織は昨年に被爆体験の講演会の控室で一緒になったが、守は覚えていなかった。

「大庭さんですよね。去年に講演会にいらしゃっていましたね」

「おおそうか。ごめんな、歳も歳だし、記憶力が落ちてるんよ」

「まあまあ、いいですよ」

試合は延長戦になったが、結局カープは敗れた。守は芸備線の終電時刻の都合で中座したので、それ以降は拓人と悠斗、詩織の3人になっていた。悠斗は高校1年生の時に旭川スタルヒン球場で見かけた拓人のことを思い出した。

「あのう、5年前に旭川で守さんと一緒に観戦されていた方ですよね?」

「そうだよ。あれ、何で知ってるの?」

「あの時、隣の席に、僕はいました。守さんと少し話をしました。」

「そういえばあの時、守さんは高校生の子と話していたのを思い出したよ。君だったのか!すっかり大人になったね。」

2人はいろいろと話が弾んだ。拓人は詩織にも話しかける。

「貴方はどこの出身なの?」

「宮崎です。」

「おや、広島出身じゃないのにカープファンなんだね。まあ私も金沢なのにカープファンだけどさ。ハハハ」

「悠斗さんのカープ熱に私も巻き込まれて、ファンになっちゃったのよ。フフフ」


帰り際に拓人は2人に名刺を渡した。悠斗と詩織も拓人に名刺を渡した。

パフォーマンスシートの通路から階段を降り、1階席後方のコンコースを入場ゲートに向かって歩いている際も、悠斗と守の話は途切れなかった。帰路に就く大勢の群衆の中を、3人は離れず行動を共にしていく。

「悠斗君、学校での専攻は何?」

「行政学です」

「それなら、将来は何を目指しているの?」

「公務員です。そろそろ試験勉強を始めなきゃ、ですね」

「詩織さんの専攻は何?」

「平和学です。マスコミ関係への就職を目指しています」

「森川先生は社会学の中で、何を専門にされているのですか?」

「人と人とのコミュニケーションだね。マクロに社会情勢を見るのじゃなくてむしろ、ミクロな人間研究だね。ハハハ」

広島駅で悠斗と詩織は改札口に向かい、ホテルに向かう拓人と別れた。「また一緒に観戦できたらいいですね」「そうですね」と語り合って別れた。

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