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25年ぶりの悲願と、その後の急転

 この年のカープは非常に勢いが良く、首位を独走していた。いつ優勝するのかとファンは待ちわび、マスコミ報道は過熱していった。


9月10日。カープは優勝へのマジックを残り1にして、東京ドームで巨人と戦った。お互い点を取り合い、9回裏、巨人の攻撃を迎えた。6-4で、カープがリードしていた。

全席完売となった球場の観客席からは、カープファンが固唾を飲んで、一心に守護神の中崎翔太投手に向かって祈っていた。


2アウト、ランナー1塁。そこから巨人の選手が打った打球は、ショートの田中広輔選手が捕球して送球し、ファーストの新井選手が掴んだ。


その瞬間に球場が沸き、広島が沸き、全国のファンが沸いた。1991年以来、25年ぶりの悲願が叶った。黒田投手が男泣きした。緒方監督に続き、黒田投手、そして新井選手が胴上げされた。チームの精神的支柱である2人は、共に抱き合った。


広島市の市街地中心部はファンでぎっしり埋め尽くされ、至る所で喜びが渦巻いた。胴上げも起きた。全国TVの長いニュースとなり、地元広島の新聞は一面全てで大きく報じた。スポーツ新聞・五大一般紙も軒並み大きく報道した。


悠斗と詩織、陽子も薬研堀の居酒屋で喜び合った。日付が変わった11日の午前2時まで飲み続け、歩いて横川への帰路に就いた。帰路も至る所で、赤いユニフォームを着た人とハイタッチした。陽子の自宅に3人が上がり、4時になってようやく眠り込んだ。


昼前の10時半になって3人は起きた。悠斗と詩織がおもむろに帰り支度を始めた。その時、陽子の電話が鳴った。麗華からだった。


「麗華さん、おはようございます。優勝おめでとう!」

「うん、めでたいよね。でもね、さっき、7時に…。」

「何があったのですか?」

「お祖父ちゃんが、亡くなったの…。」


麗華のその声は、陽子の電話越しに、悠斗と詩織にも聞こえた。3人は思わず固まった。

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