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鬼切怪奇譚  作者: 藤崎要
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第七話 鬼切の総代



 とある日の深夜のこと。草壁京介は鬼切神社の詰め所の一室で上半身裸の姿で横たわっていた。側には鬼切の総代と呼ばれる黒装束を着た者の姿が。


草壁「ちべて!あ〜、しみる」


総代「もう、体を動かさないでくださいよ。私も手で直接触るというわけにはいかないので」


 総代の手には長めの菜箸のようなものが握られており、液体の入った陶器の器から染みた白い布を一枚、また一枚とひっかけては取り出し、ソレを草壁の体に貼り付けている最中なのである。


総代「でも、これでもだいぶ良くなったほうじゃないですか?貼る量も減ったことだし」


草壁「そうなんですけどね、

神経にまで直接響くようなこのなんとも言えない感じはなかなか慣れるものではないですよ」


 草壁の体に貼られた布は右目と左肩に集中しており、それは以前ある件で【両目に左腕、そして心の一部まで持っていかれる】という事態に陥り、命を落としかけたことによるものである。


一時は生死の境を彷徨うも意識を取り戻し、こうして総代のもとを時折訪れては治療のようなものを行うことで前述の通り、左手は五十肩の痛みレベルにまで、視力は左目1.0右目0.5へと順調に回復の効果が出ているものの【心においてはいまだにこれといった手の打ちようがなく、持っていかれたまま】の状態なのである。ゆえに草壁は激しい感情の伴う肉体的な生理現象などの類いを現状ほとんど持ち合わせていない状態という事。


 そもそもなぜそうなってしまったのか?において、件の詳細まではいずれ語る時(事)があるやもしれないが今回は差し控えさせていただくとして。


今回、語るのはソレが【構図の読み違え、見落とし】といったミスによるものだと云うことである。




 【そもそも構図とは?】




 鬼切衆と呼ばれる者たちの用いる術法のなかでは基本中の基本、初歩の初歩ではあるものの、逆にコレができなければ鬼切衆としては門前払いという必須要件である。


 つまり、草壁はけして初心者でもなければむしろ【人生何回目?】と言われるほどの研鑽を積んでる方ではあるものの、件においては草壁も含めその場にいた者全員が致命的なミスを犯したから現在このように至るというわけである。なお、その件では草壁の仲間8人が【魂まで】持っていかれている。

  

 この構図というものは、そこに関わる人間やそれ以外のモノのの立場や立ち位置といった関係性、どういう経緯でそれらが形成され現状を維持しており、その心理面まで含めての相関関係を頭の中に図面で起こすものである。それは前述したようなプロファイリング的な範疇を超えて【業や因縁、因果】といったことにまで及ぶほど緻密に行われる。


 それにより、どういった対処を行うかを判断するのが構図を読むということにはなるのだが。


 しかし、特に【人は揺らぐ生き物】であるがゆえに、どこでどのタイタミングでどう変化するかといったイレギュラーまでを含めると完璧に把握し当てきるということまでは難しく、けして油断をしたというわけでもなければ細心の注意をはらってもなお、草壁のようになることもあるわけで。故に構図を読むのは先の先のその先や不測の事態にまでに及ぶのであるが。


 それが例えば、占いのように十中八九的中でも十分と言って差し支えないものもあれば、鬼切衆の携わるような件においては、その残りの1か2、僅か0.1すら外すことが即ち致命的な命取りにもなりうるというわけである。


 またこの構図読みというのは、単に事前の準備といっただけのものではなく、それそのものが術法として用いられるということも多々ある。


 なぜなら、そこまで構図を読み解き理解できるということは、現状の構図自体を意図的に操作したり仕掛けることで逆にそこへ新たな因果をもたらせられるということも可能だからである。故に鬼切衆の基本にして奥義とも呼ばれるわけで。


 草壁の「このままだとあなたは地獄行きだったんです」という台詞も、実はこの構図読みから来ているわけです。


 もし自分の周りにこのような「人生何回目?」だったり、まるで【構図を読めている】かのような人間がいたとしたら、鬼切衆かあるいは自分となにかしらの因縁や宿縁のようなものがある方なのかもしれですね(笑)


 【以上、作者の説明終わり】


総代「心のほうはまだ戻りませんか?」


草壁「ええ。というか、こればっかりは取り戻そうというよりも新しく生まれてくるというほうに望みを持つほうが良さそうですね(笑)」



 第七話(終)

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