第六話 某庁舎地下 第三保管室
野沢「あれ?草壁さん、そっちは地下駐車場で倉庫はコッチですよ?」
草壁「いや、あれは一般のほうで。コレはこっちのエレベーターから降りる別の場所なんだ」
野沢「へー、初めて知りました」
草壁「タマちゃんの言うとおり、普通は地下駐車場に降りるほうなんだけどね?このキーをさして降りると駐車場を通り越してソチラ側のドアが開くようになってる」
草壁の言うとおり、エレベーターはボタンの無い場所まで降りた。そして二人の正面ドアではなく後ろ側のドアが開いた。
草壁「さ、どうぞ」
野沢「こんなところがあったんですね」
草壁「うん、タマちゃんも一応は知っておいたほうがいいかもって課長がね。大丈夫、一人で来ることはまずないとおもうし」
野沢「絶対来たくありませんよ、悪い予感しかしないです」
草壁「だよね(笑)」
二人は地下通路を進み、その間にあるセキュリティロックを解除してさらに奥へと進んだ。
草壁「ココが第三保管室だよ、入って」
野沢は中へ入るとその時点で重い空気に襲われた。
野沢「あの家となんか感じが似てる気がします」
草壁「そう?まぁ、数もあるからね(笑)ここは今回押収したモノみたいに取り扱いが詳しくわかってない場合とか、その処理法が決定するまで一時的に置かれる場所なんだよ。おそらくコレなんかは海外で購入したものなんだろうけども、比較的危険度の低いものがココには安置されてる。あ、ソコの空いてるとこがいいかな」
野沢は草壁の指示通り、例の仮面とナイフの入った箱をそっと置き、素早く手を離して戻ってきた。
草壁「だからそんなにビビらなくても大丈夫だって(笑)言ったでしょ?ココにはまだそこまでヤバいモノとかは置いてないから。今回だって死人までは出てないんだし。第一や第ニのように、もはや祓うのが困難だったり引き取れるような所がないようなモノにくらべたら全然♪」
野沢「いやコレも十分危険だと思いますけど、そんなにヤバいのがソコにはあるんですか?」
草壁「あるよ、そりゃ。なんだろ、寺社仏閣でも迂闊には引き渡せないような場合とかさ。例えば、廃社されたところのご神体だとか別の所に移動させて既におられる神様とハイ一緒にってわけにはいかないでしょ?それに準ずるモノとかだったり、そもそもこの世にあってはいけないようモノとかね。でも、そういう【見たり触っただけで死ぬ】みたいな笑えないようなものは第一や第ニ保管室のほうにあるから」
野沢「草壁さん、そこに入ったことあるんですか?」
草壁「もちろんあるよ。出てから背広を脱いだら、ワイシャツの背中の部分だけがスパッと綺麗にさかれてた。そのときは刀かなんかを運んだと思うけど、俺そんなに太ってないからね(笑)」
野沢「も、もう出ませんかココ?」
草壁「そうだね、長居して良いようなところじゃないし(笑)第一、第ニのほうは寄らなくてもいい?よかったら案内するけど?」
野沢「できればご遠慮させていただけますか」
草壁「冗談だよ(笑)あそこは上の許可とか色々無いと入れないからね、俺も嫌だし」
野沢は第三保管室を出るとき、さらに奥に格子扉で遮られた部屋があるのをチラ見した。そのたった一瞬、垣間見ただけでも感じ取れる、人を寄せつけようとしない拒絶的な圧と、孤独に静寂を永遠と保たれている雰囲気に身震いをしその場を後にした。
第六話(終)