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鬼切怪奇譚  作者: 藤崎要
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第三話 野沢 玉磨(たま)


 ラーメン屋から出てくる二人。


野沢「ごちそうさまでした」


草壁「いいえ。ここのラーメンなかなかいけるでしょ?前の店主がお弟子さんと一緒にやめちゃってさ、同じ場所に新しく別の人が開店したと思ったら前のお店と全く同じ味だったんでビックリしたんだよ(笑)」


野沢「入ったことは無かったですけど、そうなんですか」


草壁「うん、他にもお弟子さんがいたんだろうね。店主よりも弟子のほうが美味しいって有名な店だったんだけど。それで、あのタマちゃんさ?くれぐれも変な方向に話を持っていくのだけは勘弁してね?」


野沢「別にそこまで気にしてませんよ、ちょっと言いたかっただけで(笑)ただ、今まで私だけ同じ部署で蚊帳の外だったんだってとこが引っかかるというか癪に障ったものですから」


草壁「ソコは採用枠の違いもあるからね。ほんとは今回も頼むべきではなかったと俺は思ってるし」


野沢「いやソコがそもそもおかしいというか、今まで普通に日々やってきたことが私の知らないことだったってなんか不愉快じゃないですか?」


草壁「ンー、それはなんとも。俺の一存ではないだけに」


野沢「わかってますよ。それで報告書のほうは私にも見せてもらえるんですよね?」


草壁「それも勘弁して(笑)その代わり、あの家の事をできる範囲で車の中で教えるからさ。ね?」


野沢「、、、わかりました」


草壁「あ、タマちゃんこういうとこにね、トリュフとかあるんだよ。ほら、ソレそうじゃない?」


 と草壁は道路に面した植え込みを歩きながら指さす。


野沢「あれは犬のフンですね」


 ピーピ。店から少し離れた路地裏のお客様用駐車場に停めていた車に乗り込む二人


草壁「あそこはね、元々代々名家の所有でそれまではなんだかんだうまくやれてたみたい。でもある日、養子を迎えてから色々あっておかしくなってしまったんだよ」


野沢「いまいち要領が掴めないんですけど、それで?」


草壁「養子を迎えてからしばらくして元の所有者は施設で暮らすようになり、そこから先はその養子が所有者になったんだ」


野沢「まさか、乗っ取りってヤツ?」


草壁「まぁそれに近いかも。ただ法的には問題ないんだけど、そのやり方が不味かったんだろうね。それで元の所有者の親族とも裁判になったりとか色々あったみたいだけど結局は養子のモノになった」


野沢「その恨みからとか?」


草壁「いや、元の所有者は学校や図書館に寄付したりする、とても人あたりのよい名士だったんだよ。施設に送られた後もけして養子への不満を漏らすこともなく、穏やかな余生を送ったそうだ」


野沢「じゃあなんで?」


草壁「だから養子のほうに問題があったってこと。やっぱりタマちゃんの思ったように裏で色々やってたみたいで最終的には刺されて亡くなってる」


野沢「あぁ」


草壁「なんだろ、人は良いものも悪いものも意図せず呼び出してしまうってことがあってね。ほら、人ってそのカタチそのものが依り代になりうるカタチでもあるわけじゃない?」


野沢「つまり、人をかたどったものが依り代なら依り代の逆もまた然りって事ですか」


草壁「そそ。それがまた神様やそれに近いものだったりすると、我々人の手に負えるようなものではなくなる。またそういうのを知らずに悪戯に関係性を崩してしまうとこういう事態を招いたりするんだよ」


野沢「あの家に行く前の私だったら、まず目の前のこの人から逃げなきゃって思うような話ですけどね。今は不思議と納得している自分がいます」


草壁「なら良いけど(笑)それで、その元の所有者が亡くなる前に言い残した言葉が【これで私は我が家に代々続く長年の因果を解き放った】と。自分の代でなんかしら終わりにしたかったんだろうね」


野沢「じゃあ、そのためにあえて養子を迎えたということですか?結果的に、思惑どおりになったと」


草壁「そういうこと。己の力では勝手に破棄することができないような仕組みの場合、そうなるように仕掛ける他、方法はない。が、自業自得とは言え自ら望まぬ因果を背負うことになってしまった者の行き着く先は逆恨みというカタチで地獄へと誘われたようなものだから。それがあの家の本性ってとこだろうね」


野沢「因果応報、闇の深いお話で。でもまぁ、草壁さんが色々やって管理されるようになったってことは、これはこれで結局良かったってことなんですよね」


草壁「ま、そういう事にしておこう(笑)」


第三話(終)

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