第二十六話 鴉 降臨
静寂の夜、森野がベッドで寝付けずにいると。
森野「今日は来客が多いね」
格子で覆われたガラス窓の向こうに一羽の烏が舞い降りた。中秋の月明かりに照らし出されたその影は格子の隙間から室内へと伸びていき、森野のベッドの傍らに近寄るとこう呟くのでした。
影「籠に囚われていた我々の仲間が解き放たれた」
森野は薄目を開けたまま、その影に語りだす。
森野「久しぶりだね、鴉。そうだよ、頼まれたんだ」
影は鳥の姿から人へと変わり。
鴉「もう会うことも無いと思っていた」
森野「それがわざわざ会いに来たくらいだから、呪いでもかけにきたのかと思ったよ。でも、目を合わそうとはしてくれないんだね」
鴉「それは、お互い様だろう」
森野「キミでも【呪い】を警戒なんてするんだ?」
鴉「呪いは人の心が腐熟させるだけのものに過ぎず、腐り始めたものはいずれは腐る。産まれた時から呪われていようが呪われるために生まれてきたわけではない」
森野「でもその言い方だと臨海湿度を超えてしまってると」
鴉「あぁ、もう手遅れだ」
森野「憂いてるの?」
鴉「儚む価値もない」
森野「そのわりに君たちこそ、悪あがきしているようにしか見えないけどね」
鴉「我々には家族がいる」
森野「そうか、なら目的はコレを取りに来たんだろ?」
森野はそういうとベッドから起き上がり、机の引き出しから骨の一部が入ったガラス瓶を鴉に向けて差し出した。
森野「いいよ、持っていって。別に僕が持っていても仕方のないものだし」
鴉「、、、」
森野「家族と一緒に埋めてあげると良いよ」
鴉は瓶を手に取ると塵のようにその場から姿を消した。
森野「相変わらず愛想が無いね」
その時、部屋のドアをノックする音が。
森野「そこに居たんだ。なんで入ってこなかったの?こういう時のために君たちはいるんじゃないの?」
職員「一部始終見ておりました。解脱者と簒奪者、誰が近寄れると思いますか?」
森野「ま、本能なら仕方ないよね(笑)」
職員「いえ。仕事柄、別に命が惜しいというわけではありませんが暴れられると迷惑ですから」
森野「怪獣映画みたい(笑)」
職員「みたいじゃなく、そのままかと」
森野「じゃあ、そろそろ不死根さんも休んだらどう?僕もなんだか眠れそうな気がしてきたよ」
不死根「それは何より。私は命拾いをした直後でなかなか眠れそうにありませんが」
森野「興奮してるんだ?でもね、烏の本当の怖さは個ではなく群れにあるから覚えておくと良いよ♪」
不死根「肝には命じておきます、役にたつかはまた別として」
第二十六話(終)




