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鬼切怪奇譚  作者: 藤崎要
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第ニ十四話 木野ちゃん



草壁「お祓い!?」


野沢「ちょ、声が大きいですよ。ええ、その草壁さんに頼めないかと思いまして」


 辺りを見渡しながら職員食堂で会話をする二人。


草壁「えー、嫌だよ。だって怖いし(笑)なんかそういう神社とか霊媒師みたいなのあたってみたらどうなの?」


野沢「いや、それができればという話なんで。わりと真剣に頼んでるんですけど?」


草壁「タマちゃん、人にお願いするときはもっとこう威圧的じゃないほうが良いと思うんだけどね?」


野沢「無理なんですか?草壁さんならそういうの得意だと思ってたんですけど。私のときもなんとかしてくれたじゃないですか」


草壁「得意って。まぁ、でもアレは呪いだからその霊とかとはまた違った話でね」


野沢「友達が困ってるんです。前から霊感みたいなものがあってよく見る方らしくて、それで引っ越した先でも不可解な事が起こるみたいで」


草壁「んー。気持ちとしてはなんとかしてあげたいというのもわからなくはないんだけども、そういうのってきりが無いというかね。また同じようなことが起きたとして今日あいてます〜?みたいなカフェに寄るノリで来られてもさ、俺にもプライベートってものがあるわけだし」


野沢「今回だけです。昔からの親友なんで」


草壁「そう、タマちゃんお友達いなさそうだもんね?(笑)」


野沢「チッ。綺麗な女性の頼みごとならホイホイ聞くくせに」


草壁「あ、なんか言った?誰が?いつ〜?」


野沢「いえ、本当に今回だけです。お礼も、もちろんしますから」


草壁「それはいいよ。俺、公務員だし(笑)でも、公務員というのはそもそも公共の奉仕者であって」


犬山「じゃあ私が許可しますよ。もちろん公務として」


 定食のトレーを持った犬山課長が草壁の横に座った。


草壁「課長、聞いてたんですか?いや課長もわかってるとは思いますけど、こういう私的な頼みごとは我々の管轄とは」


野沢「じゃあ、今ここで泣いても良いんですか?」


草壁「え?」


野沢「みなさん何事かと見るだろうし、困るの草壁さんですよ?それでも良いんですか?」


草壁「ソレ、本気ってことだよね?」


 野沢は今にも泣きそう顔で頷いた。


草壁「はぁ、ほんと今回だけだからね。それに俺が行ったとしてどうにもならなかったりする場合でもそれは知らないからね?」


 草壁はそういうと席を後にした。野沢はいなくなったのを見届けると真顔に戻り舌を出した。


犬山課長「でもまぁ良かったじゃないですか。彼はあー見えても真面目な男ですから、一度引き受けたものは最後まで責任を持って対処してくれますよ♪」


 そして、野沢と待ち合わせの日。


草壁「ここ?」


野沢「はい」


草壁「へぇ、一人でこんなとこに住んでるの?」


野沢「もう、いいから入りますよ」


 マンションの共用玄関のオートロックを開けてもらい中へ入る二人。


野沢「木野ちゃん、私」


木野「タマちゃん、本当に来てくれてありがとう。どうぞ入って」


草壁「はじめまして、野沢さんの同僚の草壁と申します」


木野「よろしくお願いします。あの、詳しくは中でいいですか?」


 そして。


草壁「夜、寝ていると誰かがベッドの脇に立っている気がすると。あと悪夢をよく見る、気持ちが重いと、、、」


木野「ええ」


草壁「なるほど、だいたいわかりました。ちょっと家の中を見させてもらっても構いませんか?」


木野「どうぞ」


 草壁はカーテンを開け窓の様子を見た。


草壁「結露してるね、ここ元々湿度が高いのかな?」


木野「加湿機付けてるんで、それかと」


草壁「なら逆に除湿したほうが良いかもね、ほら窓枠にカビが(笑)」


野沢「草壁さん、クリーンアドバイザーじゃないんですからそういうのはいいんですよ」


草壁「いや、そういうのも一応効果はあるみたいだから(笑)これ外、ベランダだけど開けても良いかな?」


木野「少しだけなら」


草壁はベランダに出ると辺りを見渡しながら落ちていたセミの死骸を拾ってティッシュペーパーに包めた。


野沢「それ何か意味があるんですか?」


草壁「いやまぁ、虫の死骸見てそのままというのもね(笑)」


 そんなことを色々やりながらも。


野沢「どうなんです?この家、何かあるみたいなんですか?」


草壁「いや、全く(笑)ただ」


野沢&木野「ただ?」


草壁「ずっと気になってたんだけど、あの部屋って入っちゃいけないの?」


 草壁の質問に急に顔を見合わせる二人。


草壁「ひょっとして片付けられてないとか?まさかの汚部屋だったり?(笑)」


木野「違います」


草壁「あと見てないところ、そこだけなんだけどなぁ。何か事情とかあるの?」 


木野「、、、じゃあ少しだけなら」


 そう言って案内された部屋は所謂、配信用というものでした。


草壁「あーなるほど、そういう事なのね」


野沢「だから他所へは頼めないんですよ。てか絶対に漏らさないでくださいね?彼女は有名なんで」


草壁「有名?俺、今はじめて知ったけど」


木野「そう(笑)」


野沢「ごめんね。この人が世間に疎いだけだから」


木野「良い、そのほうが安心する(笑)」


草壁「で、結論から言うとおそらくは【生霊】の線が濃いかもねって話」


野沢「生霊?」


草壁「うん。ここにはそういうものは付いてないと思う。でもベランダで見つけたセミの死骸だけど、あれはヒグラシって言ってこういう町中の市街地では珍しい方なんだよ。主にヒノキや杉林のある山間部に生息してるもので、この辺の神社や公園の植樹地帯にはいるのかもしれないけどマンションのこの高さで見つかるとしたら、虫の知らせの類かなって(笑)もちろん絶対とはいわないけども。ただ、そういう事がどうしても気になるというのであれば、まず部屋の片付けや身なりを前向きに整えるという事が大事でね。俗にメンヘラ系といのもファッションなのはわかっているけど、負の感情に共感性を持つくらいならあえてやらないほうが自身のためでもあるってこと。かえって病みやすくなるから(笑)」


木野「、、、」


草壁「生霊ってのはね?飛ばしてる本人ですらも自覚が無いようなもので、生きてる人間のほうが元々は強いんだよ。でも風邪と同じで弱ってる時なんかに影響を受けやすくはなるんだ。だからね、せっかく人数もいることなんだしこの際、片付けられるものは片付けてリフレッシュしたほうが良いんじゃないかってこと。自分のためにもね♪」


 こうして草壁たちは部屋の片付けをし、ひとまず様子を見ることにしました。そして。


草壁「彼女、あれからどう?なんか言ってた?」


野沢「それが不思議と今は何事も無くなったって」


草壁「そりゃ良かった。てか不思議とって、俺のこと信じて無かったってことなんじゃ?」


野沢「まぁ良かったでいいじゃないですか(笑)これで私の推し活もうまくいくわけだし」


草壁「ん?なんか今、釈然としないような、俺だけこき使われただけのような感じが」


 第ニ十四話(終)

 

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