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我ら二人の孤児院の管理人

「月並みだけど私に敵意はない。だから、そのナイフを下ろしてくれないかしら?」

 一目見て思わず腰からナイフを抜き、構えていた。到底このナイフじゃ、かないっこないと知りつつ、構えていた。完全に油断していた。改めて意識をしてみると、なかなかどうしてこんなにはっきりと魔王の圧が感じ取れる。魔王特有の研ぎ澄まされていてもなお、分かる尖ったオーラ。村長の顔を確認すると、その長い白い髭を撫でているだけであった。敵意がない、という言葉を一旦信じてナイフをしまった。

「失礼した。で、非常に申し訳ないんだが、どういうことか誰か説明してくれないか……」

「私から説明してもいいが、その前にあなた体洗ってきてくれないか?村長、悪いがこいつ、えーっと」

「サブロ、あぁいや名前はそうだな……ロックだ。俺はロックだ」

「このロックにシャワー貸してやってくれないか?」

「もちろんいいですとも。初めましてロックどの、ご友人ということであれば歓迎いたします。今、案内いたします」


 村長自ら案内、というか村長と言っても手伝いを大量に雇っているわけでもないようだ。村長に連れられて部屋を出て少し歩いたところで質問をした。

「一つ確認したいんだが、先ほどの女性は魔王で間違い無いんだよな……?」

「えぇ、詳細についてはご本人の口から説明があるかと。貴方様はご友人というかお知り合いで?」

「えぇ、まぁそんなところですね」

 シャワールームに着くと質の良いタオルや、簡素な着替えなどが置いてあった。タオルを持ってみると、毛の触り心地がよい、この質のタオルは王国内でも見たことがない。

「村長、これはどこで……」

「そちらは、魔王様から輸入した特殊な繊維で織られてまして、なんでも特殊な条件下で育った魔獣の毛なんだそうです。吸水性に優れていてかつ触り心地が天上のもの、もちろんこの村でも来客用にしか置いてはないのですが」

 魔獣の育成について非常に気になるところだが、一先ず臭いをさっさと流してしまおう。


 シャワーを浴びて先ほどの早に戻ると、やはり魔王がいた。村長と何やら楽しそうに話していた。

「シャワーありがとうございました。本来であれば先に挨拶すべきなのですが、ロックと申します。故あってこの村に立ち寄らせていただきました」

 そう言って、深く御礼をした。

「いえいえ、貴殿についてはこちらの方からお話を聞かせていただきました。儂は村長のガンズと申します」

「おう、私の方からあんたが何者でってとこは話しといたよー。だから、その後の話してもらえるかい?何故、勇者御一行のあんたが一人、ボロボロで自前の装備もなく、簡単な装備でこの村に立ち寄ったか」

 魔王に分かりやすく促されて、俺は説明した。流石に村長には隠すべきではない、と判断した。

 魔王討伐後に王家に狙われてアサシンの温情で命を拾って今ここにいることを話すと、魔王が笑った。

「相変わらず王家もくだらないことやってんのねぇ」

 知った風に口を聞かれたが、俺より生きているのだから何かを知っているんだろう。

「で、あんたこの後どうすんの?復讐って言ってもまだなんも考えてないでしょう?」

「それは確かにそうなんだが、その前にまず俺の質問に答えてくれないか?何故生きている?何故ここにいる?」

 今の俺の最大の疑問を投げつけたが、答えはあっさり返ってきた。

「まず一つ目だけど、単に私のスペアーーって言っても主が死んだら切り替わるだけなんだけどーーを用意してただけ。若干こっちの方が本体の年齢は若いわよ?二つ目は魔王として死んじゃったから、交流のあったここで生活させて貰えないか、って話をしにきてたの」

 話を信じるなら、魔王を倒したのは間違いないみたいだが、魔王の方が上手だったようだ。

「そういうことか、承知した」

 しかし何故、こんな村に。

「この村、結構穴場なんだからね」

「また、魔王らしく何か企んでいるのか?」

 魔王を睨むとヒラヒラと手を振った。

「私の魔王の役目はもうお終い。だから引退よ引退。隠居生活するなら過ごしやすい場所がいいでしょう?」

 それは理にかなっているが、とまだ納得できないできると魔王が質問を出してきた。

「あんたはこの後どーすんの?」

「……もし村長が許してくれるならこの村で生活をさせてほしい。迷惑はかけないし、力仕事や戦闘なら十分貢献できる、と思う。いきなり押しかけて難しいとは思うのだが……」

 村長は明るく笑って答えた。

「ほっほ、それくらいお安い御用で。土地もありますし、二人くらい増えたところで大して変わりはしませんよ」

 ありがとう、そう言って深く頭を下げた。すると、

「ただ一つだけ問題がありましてな……空いている居住スペースがありませんで……」

「あらそうなの?私が作るとしても少し時間かかっちゃうわね……どうしましょ」

 3人で悩ませていると、名案が浮かんだのか村長が提案した。

「いいことを思いつきましたぞ。二人にはある施設の管理人になっていただきましょう」

「それは構わんが、何の施設なんだ?」

 オホン、とわざとらしく咳払いして村長が答えた。


「孤児院です」

 流石の魔王も面食らったようで、俺と同じく口を広げて村長を見た。




もーちょいで導入終わる……

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