プロローグ
自分語りはあまり好みではないが、ほんの少しだけ語らせてもらいたい。
これはこの国への復讐である。
俺はもともとファンタジーでもなんでもない、普通の世界で生を受けた。両親には正しく愛されて、健やかに成長をしていった。私生活が順風満帆であったかといえば、学業においては程々に優秀であった。苦手な科目も少なく、知識を貪欲に吸収していった。しかしながら、外見も普通以下で性格も少し内向的な俺はあまり浮ついた話もなく大学院卒業まで、清らかな身であった。大学ではいろいろなことを学び専攻である工学系や、一般教養の分類である基本的な会計や統計なんかを学んでいた。いろいろな分野の知識を取り入れることが楽しかったのだ。
会社に勤めていたある日、連日の残業が体にきたのかほんの少し帰り道でふらついてしまった。運悪く足を滑らせてしまった俺は、そのまま大型車に轢かれてしまった。かろうじて一命はとりとめたものの、植物人間状態のままで動かせない身体と外がわからない意識のまま長い時間いた気がする。正確な時間は分からないが体感一週間は経過したであろう時に、声が聞こえた。家族でも友人でも医者でも看護師でもない、超常の声だと一瞬でわかった。声そのものに神々しさがあったのだ。色々と割愛するがその声の主である女神と話をした結果、俺はこの世界で終える命を別の世界で転生できることとなった。その際に色々なスキルを付与してもらった。色々と注文をつけてみたが、割とすんなりスキルをもらうことができた。例えば単なる身体強化ではなく、体の動かし方を理論立てて習得した上で効率的に動かすことができ結果的に身体強化につながるようにしてもらったり、視力をとりわけ力を入れて強化してもらった。また、軽視しがちな対人スキルとして相手の表情や仕草を敏感に感じ取る力や、交渉術、などを手に入れた。しかし、惜しむらくは処世術が欠けていたことだった。
万能といえる力を持って俺はこの世界の勇者パーティに入れてもらい、道中絆を深めあってそしてパーティの力で諸悪の根源である魔王を滅ぼすこととなった。討伐翌日の夜、俺はどうやら薬を盛られたらしく深く眠ってしまい、気づけば装備を剥がされて木に縛られていた。気づいたとき、傍らにいたのはパーティの斥候担当のアサシンだった。
「あら、気づいたの。意外と早いのね」
「どういうことだ、これは」
「簡単に言えば、あなたが強すぎたのよ」
そういった彼女はどこか寂しそうであった。いや、どちらかという自分もいつかそう思われるかもしれないという、恐怖だったのかもしれないが今となってはどうだっていい。
「深くは説明しないけど、王家から私に密命があったのよ。魔王討伐後、あなたを無力化しなさいって」
魔王が破れた後、もっとも力があるとみなされるのは勇者達。その中でも俺が最も一番恐ろしかったのだろう。
「なるほどな。無力化という割には優しい対応じゃないか」
その気になれば腕力で解ける程度の縄、剥がされた装備も対魔王用のもの、無力化には程遠い。
「流石にね、この旅の仲間にそこまでできないわよ。あなたならここまで話せばわかってくれるだろうし。他のみんなには、適当に理由をつけて離脱したことにしておくわ。王にはちゃんと『あなたを無力化した』と報告しておくわよ」
そう言って彼女は立ち去った。よく見ると俺の持っていなかった食料なんかもおいてある。
「何が無力化だよ。優しいところもあるんだな」
こうして俺は勇者パーティから追放された。
この話は、無力化された俺が王家へ復讐する話である。
異世界もの初めて書いてみます。
小説家になろうでシリーズ物書いたことがないのでなにか間違ってるところがあるかもしれません。
誤字脱字はあると思うのでご指摘ください。
異世界で、勇者パーティから追放された主人公が孤児院を営んで最強の子どもたちを育成する話の予定です。