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「私の用意した手土産はどうかな?」
その声はどこから聞こえてくるわけでもなく、脳内に響く。
「・・・相手に顔も見せぬとは、不愉快だな。ASS〈無効領域〉」
すると、脳に引っ付いていいた糸のようなものがひれるのを感じた。
「おお、さすが、八壊神の一人にして、暴食と傲慢の使徒。ゼロ・・・いいや、ガクト君」
ASSによってこの空間一帯に仕掛けられたトラップや監視系スキルを無効化。念話に混ぜて精神支配系スキルの使用が確認できたため、それも無効化した。
OSの〈危険察知〉、〈アラーム〉、EXSの〈自動回避〉、〈防衛機能〉が働いたおかげで早期発見、解決だ来たがもう少し遅れていたら完全に支配されていたかもしれない。
ガクトがわざわざASSスキルで無効化したのは何も手間を嫌ってではない。
これは牽制だ。この知らない空間を我が物顔で現れた人物。
それはならば目の前の人物こそ、ガクトとユキをこの異常現象に巻き込んだ物で間違いないだろう。
さらに言わせれば、ASSクラスのスキルでないと無効化できないようなものばかりと言う事でもある。敵は少なくとも自分と同等。それ以上は確実に持っていると思われる。
「・・・がっくん」
「わかってる、ユキ。・・・交渉を持ちかける」
すると、ユキも黙って静かに頷いた。
「・・・お、話を聞いてくれるきになった?」
中性的顔立ちで白い服に身を包むその人物は僕が彼の前にイスを用意して座ると嬉しそうにそう言った。
「君がイスを用意してくれたから、僕はテーブルを用意しようか」
そう言って彼は真っ白なテーブルを出す。
「ユキ君、君も座りな。ガクト君、いいよね?」
「・・・いいのか?」
ガクトは質問に質問を返す。
ガクトの事を知っているというなら、この質問がどういった意味を持つかわかるはずだ。
「うん?・・・ああ、まあ、多少ショックを受けることだとは思うけど、大丈夫だと思うよ」
「ユキ、座って」
「うん!?」
心なしか嬉しそうな雪は椅子をガクトの隣に置き、座る。
「仲いいよね・・・まあ、いっか。さて自己紹介から。僕はアルクテアと言う世界の傍観者いわば神のようなものだ。名前は、アルミス。こう見えて女だよ?」
「傍観者・・・か」
「地球にもいるでしょ?・・・まあ、少し干渉しすぎな気もするけど」
「それで、その神様が何の用だ?」
「君たちは地球で死んでしまったんだけど、よければ異世界こない?」
・・・
「「はい!?」」
ガクトとユキの声がそろって驚いた。
※※※
それから、アルミスから彼女の傍観している世界の話を聞いた。
世界としてはB&Sと変わらないというか、アルクテアをもとに作られたらしい。
アルクテハは地球と違い、一つの浮き島のようになっているらしい。
その中央に位置するのがB&Sと同じ、map。
さらに4方にそれぞれ2000キロほど進みと星外縁と呼ばれる星の端っこにつくらしい。
それより外の事は教えてくれなかった。
ただ、その世界にも星外石は落ちてくるようで、星害獣も出現する。
それによって発生する魔物やモンスターを討伐、買い取りをするのがギルドである。
ギルドは4つあり、人間主体の魔道具ギルド。エルフ主体の素材ギルド。ドワーフ主体の鍛冶ギルド。竜人主体の冒険者ギルド。
エルフの素材ギルドは素材の扱いだけでなく、ポーションや傷薬などの薬剤も扱っている。
モンスターや星害獣を倒すものはこの4つのギルドに必ず登録するようである。
依頼を受け付ける冒険者ギルド。
道具の調達、依頼達成の副産物を卸す素材ギルド。
武器の調達、手入れを頼むが鍛冶ギルド。
冒険者に必ず持たせる冒険者カードの作成を行い、安否確認や特殊な武具の作成を行う魔道具ギルド。
これらすべて、この世界をも守る冒険者のためにある組織である以上、手助けは必須である。まずはそれに登録した方がいいという事。
異世界出身でセイヴァー、ぶえいかーであることを明かさない方がいいという事。
基本平均レベルは農民が5、各国騎士であっても騎士団長が50から60。冒険者のベテランであったら、騎士団長クラスと考えてもらって言いそうだ。
その他の事はメモしたから必要になったら確認しよう。
「あ、それと最後に君たちにお願いがあって、WGになってほしい」
「それって、たしか・・・」
ガクトはそう言ってユキを見る。
「うん?」
「ユキ、あの天秤を出して・・・」
「うん?いいよー」
そう言って、ユキはストレージから黄金の天秤を取り出す。
「・・・救世神器」
「やっぱり、これを知っているんだな。あのゲームの中ではただのお飾りだったが、これに何か意味があるのか?」
すると、アルミスは急に立ち上がり、膝間づく。
「申し訳ありません、最上級神に使徒様とは思わず」
「・・・ふぇ?」
「どういうことだ?」
「我ら傍観者は神の中で最も下の下級神であります。その天秤は我らのトップである二神がお一人、創生神の眷属:熾天使のみ所有を許された救世神器であります。熾天使は私の一つ上の存在である中級神の中でも上位に入る存在と言われています」
「じゃあ、がっくんのあれもすごいのなんじゃないの?」
「あれ・・・ですか・・・」
そう言ってガクトは1本の黒刀を取り出す。銘は傲慢の大罪武器、妖刀:村雨。
封印状態で破壊不可能属性を持つため、長期戦用汎用武器として使用していた。
それを見た瞬間、アルミスは腰をぬかした。
「それは、まさか、大罪武器!?破壊神様の眷属まで・・・」
「その破壊神と言うのは・・・」
「はい、最上級神のもうお一人です」
すると、ガクトとユキはため息を吐いた。
「そうなのか・・・まあ、あいつらだろうな・・・」
「あの二人だね・・・」
「お会いになられたのですか!?最上級神様に!」
二人の言葉にアルミスが驚きを隠せない。
「たぶん、地球の傍観者がその二人だ・・・。はぁ、そういうことかよ・・・」
「そうだね、これがあの時助けてもらったお返しか・・・まあがんばろう。それで、俺達はあの世界で何をすればいいんだ?」
「そんなまさか・・・」
「おーい」
「は、はい。すみません。それで要件でしたね。お二人は向こうの世界で星害獣を倒すお手伝いをして頂ければと思っています」
「星害獣を・・・ね」
「はい。現在アルクテアのとある一国が星害獣によって滅ばされたはかりであり、至急それを討滅して欲しいのです」
「・・・まるほど」
「わかった、じゃあ、すぐにこう!」
そう言ってユキは椅子から立ちがる。
「いいのですか?」
「いいも何も・・・早くしないと邪神が現れるんだろ、どうせ」
「え、あ、はい」
アルミスは予想外のものを見たと言った顔をしている。
「じゃあ、俺達を早くそこに転送してくれ」
「今、転送します。向こうに着きましたら、我眷属のドラゴンが現れると思いますので、彼女から詳しいお話をお聞きください。GS〈転送〉!」
二人は白き光に包まれ、その光が収まり目を開くとそこは火事で燃える王城の中だった。