プロローグ
新作始めました
プロローグ
「グルウウウウウウゥウウウウ・・・」
まるでケルベロスのように3つの首を持つ恐竜型星害獣『オメガティラノザウロス』と言う恐竜に似たモンスター。
その眼前に転がる200のアバターと満身創痍で立っている20余りのアバターを見て唸る。
「くそ、なんて強さだ!?」
「今回の星外獣はなんなんだ!?BもSも弱点じゃないだと!?」
「くそ、今回の星外石は過去最大と言うのに・・・!?」
星外石。それはこのゲームに置いて通常では手に入らない惑星外の金属の含まれる隕石である。それで作る武器屋防具は通常手に入るアイテムよりもかなり強く稀にスキルを封じた宝石が手にはいる事もある。
しかし、その星外石の中には先の恐竜型のモンスターのように星害獣が封じられており、毎回数百人規模の討伐体が組まれるのだ。
・・・ただ、今回の敵は今までの日で比では無かった。
ここに集まったのはこのゲームに置いて中堅上位のプレイヤーばかり。
本来であればこれで事足りるはずなのだが、今回は違った。
討伐体はほぼ崩壊。デスペナルティ:24時間ログイン禁止があることを考えれば、生き残っているメンバーは今すぐ撤退して仲間を集めたい。
しかし、彼らにはそれができない理由がある。
「それどころじゃねえよ!?こいつをここで止めなきゃ、ワールドマップがまた変わるぞ!」
そう、星害獣はとてつもない力を持つと同時に星の生態系を崩す能力を持っている。
過去に星害獣によってゲーム上で3つの国が亡び、その地に置いてまるで人のように学習し、様々な兵法を使い、自ら生み出して支配したモンスターを使う、まるで軍団指揮系の上位ランクプレイヤーのような邪神が誕生しやすくなる。
この邪神も予定イベントを中止させるような被害を出す敵であり、星害獣と比べて経験値やドロップ品が少ないことから極めて不人気な敵である。
「・・・っ!そうだった、こんな新ダンジョン出来立ての所に現れやがって・・・でも、もう俺ら討伐体は・・・」
「くそ、今すぐハイランカーにSOSを・・・」
「グラァァアアアアアアアアアアァ!」
すると、星外獣が3つの首から炎、氷、雷のブレスを吐く。
単なる威力の高い属性攻撃だが、今の彼らにとっては脅威だ。
彼らはこの攻撃で自分たちは死に、またこの世界が変わってしまうという後悔を抱き、涙を流す。
しかし、その瞬間に彼らは現れた。
「EXS発動。〈領域〉〈威力低下〉〈防御支援〉〈防御力上昇〉〈自動回復〉・・・」
「聖剣のスキル発動。〈光一線〉」
その声と共に彼らは突如として青き光の壁に包まれ、緑と白とオレンジの光が一瞬彼らを包む。そして眼前に迫っていたブレスは青き光の壁を超えると突如として威力が弱まり、後ろから放たれた横一線の黄色の光にかき消される。
突如としてかき消されたブレスの驚きから解放され、ある一人が自分が生きていることを確かめるためにステータス画面を開く。
そこには自動回復に防御系の付与が掛かっていることを示すハートにプラスと盾に×2と書かれたマークが目に映る。
「あ、温かい・・・それに、HPが回復している」
「けどこの回復速度、異常だぞ!?」
彼と同じくステータスを見ていた者が驚いた声を出す。
それに答えたのは今回の討伐体のリーダーであり、中堅上位の中でも名の知れたベテランプレイヤーだ。
「・・・そうか、お前らは彼らを見るのは初めてか?」
自分のステータス画面を見たリーダーは顔をあげて、ここから一番近い町とこの場所をつなぐ一本道をまっすぐ見つめる。
「彼ら?」
そういって、20人はリーダーの視線の先を追う。
「おーい、君たち―!大丈夫か!?」
「おい、ユキ!どう見てもやばいだろ!今はいち早く駈けつけて彼らの撤退の援護と同時に彼らについているヘイトを全て自分たちに移すんだ!」
森の奥から駆けてくる2人組が見える。
一人は白とクリーム色を基調とした銀髪の女勇者と言える少女アバター。
もう一人は紺と黒野を基調としたローブに中に空色のライトアーマーを着た背中に2本剣を携え、現在は短杖を持った魔導剣士の少年アバター。
「・・・そんな、増援が子供なんて」
「いや、待て。まさか・・・」
そんな20人に向けて少年は言う。
「ここは僕たちに任せて、撤退してください。万が一に備えて上位ランカーへ連絡を!」
「・・・わかった。へまするんじゃねえぞ、最弱小僧!」
リーダーの男が援軍生きた少年いそう言うと、周囲がぎょっとする。
それは助けに来てくれた仲間に対する言葉ではないからだ。
しかし、少年はそのリーダーの顔を見るなり、まるで人が変わったように笑いだす。
「はは、おっさん。こんな奴にやられてんじゃねえよ!・・・また見せてやるよ、最弱の無双を!ASS、発動!」
「カイドウのおじさん!私たちが来たからもう安心して!あっという間にやっつけちゃうから!」
そう言って二人は星害獣へと向かってゆく。
「インフィニティズ・・・」
生き残っていたうちの誰かが二人を見てつぶやいたその名に周囲はどよめいた。
※※※
「OS展開:〈並列起動〉。EXS〈領域〉〈能力低下〉〈鈍足〉・・・」
少年は杖を片手に数々のNスキルを発動させる。
B&SにおいてスキルとはNPCのクエストやアイテムと言った形で手に入るN,R,SR,HR,の四段階に分けられるCS。
プレイヤーが星外石や邪神倒すと稀に手に入る、ASS。
アバターを育てることで解放されるOS。
レベルや肉体数値を上げるのに必要な経験値と引き換えにスキルを得るEXS。
「成長を捨てた無数のスキル使い。グラスゼロ又はインフィニティキャスターと呼ばれるブレイカーアバター、ゼロ」
「なッ!あの、ブレイカー上位ランク8名、通称八壊神の一人の!?」
「それだけじゃない、大罪神器の保有者だ!」
「俺、動画で見たことあるぞ!」
「なあ、それじゃあ、あっちは・・・」
少年の事で盛り上がっていた一団は少女を見る。
彼女は光と闇を纏った剣を二本持ち、星害獣の表皮を切り裂く。
討伐体が2時間戦闘して、傷すらつけられなかった星害獣の表皮をこうもあっさりと。
「肉体の上限を無くし、補助なしでスキルを発動する少女剣士。インフィニティプロブレムもしくはアルティメットセイバーと呼ばれるプレイヤーアバター、ユキ」
「まさか、あの3剣聖の一人の・・・」
「しかも、たしかセイヴァーの天秤の所有者だったはずだ!」
「あの救世神器の保有者だと!?」
周囲のプレイヤーは彼らの強さに驚き、舌を巻く。
そんな中、二人を見ていた男は誰にも聞こえぬ声でつぶやいた。
「・・・はあ、では彼らとするか。・・・そうだ、彼は―――にしておくか」
男は巨体が倒れる音に顔を上げ、その上にいる二人を見て何かを決めたようにつぶやく。
そして男がステータスウィンドウに似た画面を操作する。
「―――では、いってらっしゃい」
彼のその掛け声とともに星害獣は自爆を起こし・・・そこには死体は人うとして残っていなかった。
そしてその日以来、インフィニティズを見たものは誰一人としていなかった。