消え行く世界で6
「ごめん……」
「いや、別に謝ることじゃない」
「でも、私のせいで今日1日移動できないから……」
「今さら1日くらいなんてことないだろ。この前なんて1日ラノベ読んで過ごしたし」
「あ、それもそうだね」
「……まぁ、こんな生活だし体調崩すのも仕方ないからな」
「だよね!」
「お前は治す努力をしろ」
「そんなこと言われても……」
「で、お前は風邪ひいてるだけなのか?」
「……」
「なぜ黙る?……まさか何か持病とか」「それはないよ」
「じゃあなぜ黙る」
「女の子として黙秘します」
「ああはい、女の子のやつね」
「君、デリカシー無いね」
「何を今さら」
「はぁ……でもたぶん、風邪もひいてる。普段なら熱っぽくならないから」
「そうか。辛いか?」
「うん、辛いよ」
「そうかぁ」
「うん」
「……」
「……」
「聞いただけなの?!」
「だってお前元気そうだし。一応聞いといただけだ」
「薄情者」
「なにを今さら」
「……さっきと似たような流れだね」
「だなぁ……」
ーーー
「消滅した人はどこに行くのかな?」
「さぁ……」
「実は消滅した人はみんな別の世界にいました!とか、ありえないかな?」
「ラノベの読み過ぎだ。消滅と異世界転移を混ぜんな」
「ええー」
「……なんでそんなふうに考えたんだ?」
「本当に自分が全部消えちゃってたら悲しいよね?だから、この世界から消えただけで他の世界で生きていれればいいなぁ、なんて思っただけ」
「この世界から離れて別の世界へ、か……それはそれで幸せなのかもな」
「うん。それで魔法とか使えて……」
「本音は魔法を使いたいか」
「あ、ばれちゃった」
「厨二病」
「君は使ってみたくないの?」
「そんなものは無いから考えることもないな」
「でも、消滅って魔法みたいだよね」
「……」
「記憶からも記録からも消えちゃうなんて、科学じゃ出来ないよ」
「そう、だな……」
「消滅って何なのかな?」
「……本当に、わからないよなぁ。消滅って、ありえないことが起こったんだよな。確かに、魔法みたいだ」
「でしょ?消滅を理解出来れば魔法とか使えたり」「それはないだろ」
「夢が無いなぁ……」
「いつまで夢見てんだ?16歳」
「なんでそんなに大人みたいに現実ばっかり見てるのかな、16歳」
「それは褒めてるのか?」
「褒めてない!」
「大人びてるは、褒め言葉だよな?」
「そんなこと言ってないよ!」
「大人みたいなんだろ?」
「むー……」
「あざとい」
「……」
「涙目で下から見つめるなあざとい」
「あざといは、褒め言葉だよね?」
「違う」
「可愛いってことでしょ?」
「……釈然としないな」
「私可愛い?」
「急に口裂け女みたいなことを言うな怖いな」
「普通に可愛いか聞いただけだよね?!」
「まぁ、普通に可愛いぞ」
「普通に……」
「まぁ、3次元に比べる対象に出来る相手がいない、というか覚えてない以上、たぶんだけどな」
「つまり私は2次元の女の子と比べて可愛いってこと?」
「いや、2次元の女の子の方が可愛い」
「……」
「ん?」
「……お世辞でいいから可愛いって言われたかったよ!」
「はいはい可愛い可愛い」
「適当過ぎ!」
「かわいー」
「……もう、いいよ。なんだか私が悲しくなってきた」
「そうか」
「うん。そう」




