※特別編※エバーグリーン後半文章
これからの文章は、エバーがあまり進んでいないゆえに、今あるネタ(先の部分)だけでも書いておこうという作者の足掻きです。
エバーが進むまで、こちらを(エバー後半予定です)お楽しみください。
※以下、エバー後半予定文章※
(先を知って大丈夫なかたのみどうぞ)
これからの文章は、エバーがあまり進んでいないゆえに、今あるネタ(先の部分)だけでも書いておこうという作者の足掻きです。
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※以下、エバー後半予定文章※
(先を知って大丈夫なかたのみどうぞ)
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「そういうわけで──黙っていました」
澄んだ瞳で語る、目の前の少女に重なるのは──かつての悪友の笑み。
長い三つ編みを揺らして、不敵に微笑んだ、今は亡きはずの友の笑みで。
驚くべきは、少女の言葉が示した、ひとつの真実だった。
「まさか……有り得ない。てめぇは、この世界でも“死んだんだ”。遺志が漂うなら、まぁ解る。てめぇは、奇想天外だからな。しかし、俺は今──混乱している」
「そうでしょうね、私も、まさか再びこの世界に生まれて、ふとした拍子ですべての記憶が蘇って──そしてまさか、君とこうして旅することになるなんて、予想もしなかったです」
「ネウマ……いや、エスタシオン……」
「はい?」
「てめぇは、ネウマなのか? エスタシオンなのか?」
揺らぐ眼差しで少女を──ネウマを見つめたフィンの頭を撫でようとして、ネウマは自らの挙動に吹き出す。
「あはは、背伸びしても手が届かないんですね、今は」
「アホか、届いてもその動作は拒否するわ!」
「相変わらずで何よりです」
微笑むネウマは一見無邪気で、姿と言動を見比べ、頭を抱える。
昔、エスタシオンと初めて会った日の違和感よりも順応が難しい、難所だ。
「……私は、ネウマです。加えて語るなら、エスタシオンとして生きた時代の記憶も心も持つ、ネウマという人間です。……故意に記憶を引き継いだわけではありませんよ、偶然だったんです。……私も少し、混乱していた時期があります。自らが、ネウマなのか、エスタシオンなのか──アウィス、なのか。そして、この身体についてもね」
「……そう……か……」
「今は馴染んでいますよ? まあ、すべての時代が過去に在った、と思えば、今を生きればいいだけですし──こうして、君と再会できたことは、私としては嬉しかったですから。……あ、姿は変わっちゃいましたけど、仇討ちます?」
にっこり笑って両腕を広げたネウマの左肩へと、フィンは自らの手を置いて──
その手の上から、鞘ごと、短剣を軽く叩きつけた。
ネウマの肩に衝撃があるかないかの、軽さで。
「──これでいいさ」
ネウマは、一瞬まばたきをすると、声を上げて笑う。
「ふっ、あはは! 馬鹿ですねぇ」
「過去は過去、今は今だ」
「……そうですか」
「俺には、あの時代、伝えられない言葉があった」
「言葉、ですか?」
「……それを、今のてめぇに伝えていいものか、今、迷いに迷っている」
フィンは空を見上げ、彼方にあるであろう、狭間の世界を眺めるように瞳を細めた。
「あの頃の俺には、二つの感情があった。一つは、てめぇへの恨み──」
「そうでしょうね」
「もう一つは……」
軽く咳払いすると、フィンは、真っ直ぐにネウマの眼を見据える。
「……愛、していた──否、今も、か──」
瞳を見ていられなくなったのか、視線をそらして俯いたフィンに、ネウマは不思議な表情を見せて……
「……まさか」
「まさか、だ」
「有り得ないです」
拒絶には程遠い、ネウマにしてもエスタシオンにしても珍しい微笑が、フィンを包んだ。
「……有り得ない、幸せです」
穏やかなネウマの声は、かつてのエスタシオンに似ながら、今のネウマにも近く、そのどちらでもない音色。
「その答えは──」
不安げに問いかけたフィンに、ネウマは柔らかな微笑みを浮かべ、言葉を重ねた。
「──ええ、かつての私なら、自責で君の想いを拒んだでしょう。今とて、それはあります。……しかし、君もそのあたりに葛藤したのでしょうし……先ほどの一撃は、軽すぎました。ならば──私もまた、時の流れを、受け入れてもいいのかもしれません」
「まどろっこしいが、つまりは?」
「有り難く、君の想いを、受け取らせていただきます」
何かが吹っ切れたような笑みに、似たような笑みが重なる。
フィンは、小柄なネウマの身体を思い切り抱き締めると、ずっと堪えていた涙をその肩に溢した。
「……っ、馬鹿が! もう、どこにも消えるなよ……! 頼むから、もう……二度と置いていかないでくれ──」
「消えませんよ、此処に居ます」
「何か無理してないか?」
「これがギリアム・ルシェードだったなら即座に刺している所ですし──今の私は、私自身に対して無理はしていませんから」
「また物騒な……そして、かつての恨みをくすぐるな阿呆。……だが、良かった……本当に……良かっ……」
ネウマは、フィンの抱擁を解かぬまま、左手だけ動かして、フィンの頭を優しく撫でる。
遠い昔より、あたたかな温度で──
「……大丈夫、大丈夫です」
語る声は、深く、穏やかだった。
*いつも、ありがとう*
いつも、本当にありがとうございます。
読んでくれた目の前のあなたに幸あれと。




