第三章 始まりの扉
「とりあえず、フォーレスの中に入りましょう。入り口付近は人がとても疎らね。今の戦闘は幸い誰にも見られていないわ。速かったしね」
「そうですね──」
木のテーブルと地図を再びどこかに格納したエスタシオンが首肯し、アズロが先導する。
フィンは最後尾について、エスタシオン──ネウマを囲む形を取った。
「ネウマ、あんまり緊張するなよ。普段通りでいい」
「はい、解りましたわ」
緊張を浮かべるネウマに、フィンは手を差しのべる。
それは、ごく自然な動作だった。
手を繋いだ二人を、シェーナは微笑ましく見やる。
(これはこれで緊張しますね)
どこからか声がして、ネウマはくすりと笑った。
(変わりましょうか?)
(いえ、大丈夫です。あなたはあなたの世界を見て下さい)
柔らかなエスタシオンの声に、ネウマはそっと頷いた。
ゆっくりと、フォーレスの石畳へと足を運ぶ。
カツン、カツンと小気味良い音がして、ああ、外にいるのだと、ネウマは僅かに首肯した。
「この通りを抜ければ広場に出るわ」
「賑やかそうですね」
「さあ、どうかしらね。いつもはそうだけど……まあ、地道に警戒していきましょ」
シェーナが早口で言って、フィンは四方八方を確認していた。
「ま、入り口のあれだけで終わるといいんだがな」




