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第一章

ネウマさん

挿絵(By みてみん)


九藤朋さんよりいただきましたネウマさんイラストです!

流れるような髪に、鈴の音色が響きそうな光景。

愁いを帯びながらも、透明無垢な表情。

複数?かもしれないフィン君よりもさらにさらに色々と不思議っ子なネウマさんを描いていただけてしあわせです…!

彼女のことはこれから色々明かされてゆきますが、ふわふわテイストに巻き込まれていただけたら幸いです。

朋さん、素敵なイラストを本当にありがとうございますー!!


※こちらのイラストの著作権は九藤朋さまにあります。無断転載はご遠慮くださいませ。



ネウマの長い長い髪は、腰より若干上あたりで切り揃えられた。

腰より下ではないものの、切り揃えた位置にがっくりと膝を落とす。


「すまない…これではまだ…動きにくいとは思うが…」


「手が、震えていましたわ。私の髪の色は、どなたかと似ていたでしょうか?」


ナイフを仕舞う音と同時に振り返ったネウマの表情は、深く奥底まで見透しているようだった。


「…巫女は、そんなことまで解るのか?」


「いえ、アクアの巫女なんて、アスプロ神の神託を真実のように伝えるだけの、権力者のお人形ですわ。あらかじめ権力者により用意された文章を、神託として読み上げる――本当に降りてきた神託を語った者は、なかったことにされてしまいますの。巫女の選別には神託の能力を重視しますが、選ばれた巫女は、能力を封じ込めなければなりません。幼い日に置き去りにした神託を授かる能力がどこにあるのか、今の私には解りません。つまりこれは――勘、ですわ」


「長く語ったかと思えば…結局それか。全く…真剣に聞いた僕が間違って――」


「でも、セレスの変化の日に授かったこの水色の髪が役に立つなら、重ねても構いませんわよ? フィンの過去が、それで解放されるなら」


結局解ってるんじゃねぇか。

そう言いたくなるのを飲み込みながら、フィンは苦笑いを浮かべる。

とらえどころのなさにおいて、ネウマの存在は、あいつに似ていた。


「――ネウマのような勇気が、なかったのさ。僕は、追いかけることも出来た。あの子達のように…後先考えずに、飛び立つことも出来たんだ。だが…それをしたのは、つい最近のこと。失ってから飛び立っても、辿り着けないのにな」


ネウマは、ゆっくりとまばたきをしてから、フィンの瞳をじーっと見つめる。


「失ってからでも、辿り着ける場所はありますわ。失ったという事実や、失ったからこそ見えるもの。目標や欲するものを手にするだけが旅ではありません。欲したものや目標以上の、予想すらしなかった奇跡と巡り会えたりするのが、旅というもの。フィンの旅は、旅が目標で良いのではありませんか?」


深いブルーの瞳は穏やかで、何故ネウマが巫女に選ばれたのかを物語っているようだった。

幼いころから、こうなのだろうか?

ネウマの瞳は何も知らないはずなのに、より遠く深くを見出だしているような…

不思議な色彩を帯びていた。


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