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第三章 始まりの扉

第三章 始まりの扉



「──もう、良かったんですよ? 実はね、フィン君とエスタシオンを建てたあたりから、廃嫡のことはどうでもよくなっていた──それまでずっとこだわっていたのに、あの頃にはもう既に、心の中で決着がついていたんです。何故なら、フィン君──きみの存在や、ラグ君の存在があったから。君たちと笑い合えるなら、私には生まれてきた意味があったのだと──そう、思えるようになっていたのです。なのに──だめですね、今、こんなにも嬉しい……。……本当はずっとどこかで、諦めきれずにいたのですね、私は」


照れたように語るエスタシオンに、フィンは相槌を打つ。


「人間なんてそんなもんさ。諦めたって諦め切れねぇ、そんなもんだらけだろうよ」


「フィン君にも、あるんですか? こういうことが」


驚いたようにまばたきをするエスタシオンを、フィンはただ、強く強く抱き寄せた。


「……あるさ。だからな、もう二度と、消えるんじゃねぇぞ、エスタシオン。俺はお前のことを、ずっと──」


「ずっと?」


「想っていた。……好きだった。愛していた。──好きなんだ、お前のことが。どうしようもなく好きなんだよ」


エスタシオンの──ネウマの小さな肩に顔を埋めて語るフィンの頭を、エスタシオンの細い指がそっと撫でる。


「まさか──そんなことって。君は、私を恨んでいるものとばかり……だけど、もし……本当なら──それは、私も……です」


驚いたような、少し嬉しそうな、珍しい声音で語ったエスタシオンを直視すると、フィンは強く首肯した。


「嘘じゃねぇ。本当だ──好きだ、エスタシオン」



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