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第三章 始まりの扉
第三章 始まりの扉
「本当に、フォーレスに用事があるから、で良かったの? ものっすごくあっけなく通れたんだけど」
まだ変装を解かぬままのアズロが訊ねて、シェーナは首肯する。
「事実でしょ、何も変なことは言っていないもの」
「しかし、あの強固なラシアン砦の扉をさらりと通行できるとはなぁ……」
フィンが感慨深げに言うのを見て、シェーナは微笑みを浮かべた。
「扉は開くためにあるのよ。いつか、ここは開けっ放しでも良いくらいになるわ。──平和な時代は、きっとすぐそこだもの」
「そうね」
アズロも頷くと、前を見据えた。
フォーレスへの街道が、延々と続いている。
「ここから、全てが始まるのですね……」
ネウマが意気込むように言うのを、フィンが静止する。
「おいおい、何かが始まりそうなのは止めてくれ。安心安全に君をセレスに送り届ける、はい終了、そういう旅だぞこれは。それ以上は何も起きん」
「解っていますわ」
フィンに軽く微笑むと、ネウマはアズロたちの横顔を順に見る。
「“何か”は、始まっている気がするのですけれどね」
ごくごく小さな声で、ネウマは呟いた。




