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第二章 優しい追い風

掌に吸収するように素早くシェルター術式を解除すると、フィンはネウマに会った時と同様の少年の姿に変化した。


「あれ?」


「大の男二人に女の子一人だと誘拐っぽいだろうが」


不思議そうに首を傾げたアズロに、フィンは軽く溜め息をつく。

ネウマもアズロも、あまり外からの視線は気に留めないらしかった。

ネウマのそれはおそらく天然である一方、アズロはあえて気に留めていないように感じられる。


「年の離れた弟と妹の二人を連れたお兄さんで宜しく頼む、アズロ…兄さん?」


「頼んでおいて疑問形はやめましょうね? いいかい、フィン」


「馴染むの早いな…。……うん、わかったよ、アズロ兄さん」


切り替えの早い司令官に苦笑いする。

そういえば、誰かの背を追うように歩くのは、久しぶりだ。


「フィン兄さま、アズロ兄さま、ありがとうございます!」


ネウマもアズロも馴染むのが早いなと思いながら、自らの割り切りの悪さに自嘲の笑みを浮かべた。

そう――理解より先に、理屈などより先に、現実が来ることがある。

何よりも必要なのは、今この瞬間を生き抜く意思。

彼らはそれを本能で察知して…或いは、知ってきたのだろう。

何気ない瞬間でも、いざというときに備えて自然に構える姿勢…


「ならば、私は――」


フィンは、いつからか彼の人物を支えるために向けてきた眼差しを、二人へと向けた。

瞳に、頼もしくも脆い二人が映る。


「どうしたの? フィン」


「…ん? 兄さんの怪我は大丈夫かなって」


悪戯っぽく微笑めば、苦笑いが返って来た。


「――フィン、いつ気付…」


「左足、治りかけてて安心したよ。治癒は得意だし手当てなら僕に任せてって、いつも言ってるよね? 次は黙って放置はだめだよ?」


あえて弟口調のまま続けると、アズロは小さく溜め息をつく。

溜め息には、笑みが混じっていた。





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