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第二章 優しい追い風

第二章 優しい追い風



「ふわぁぁ…」


いつもの調子で瞼をこすって上体を起こし、鈍い頭痛を振り払うように頭を振る。

目の前に座っていた二人を見て、慌てて後ずさった。


「――は! そうだった…君たちが居たんだよな…」


「おはようございます、だいぶうなされていましたが、大丈夫ですか?」


心配そうなネウマと口下手なフィンを気遣ってか、アズロが変な言葉を口走る。


「きっと眠りながらシェルターの術も保つには、集中力を要するんですよね。ずっと狸寝入りするみたいなものでしょうか」


「そうなのですか? シェルターの術というのは大変なのですね…」


何故か納得してしまったらしきネウマにかける言葉も見つからぬまま、フィンはようやく口を開いた。


「――ネウマ、この人は」


「アズロさんですよね、フィンさんが起きるまで、お話させていただいてました。フィンさんが昨晩秘密裏に呼んでくださった助っ人で、旅に同行してくださるとか…。朝方起きたら人が増えていてびっくりしましたが、面白いかたですね。各地を廻って歌うのが好きな、セレス人の司令さんだとか?」


「…一体どんな自己紹介をされたのやら…。…ネウマ、司令ってどんな役職か、知っているな?」


「はい、指示を出す人です」


にこやかに答えるネウマはきっと色々とわかっていないのだろうと感じ、フィンは敢えて説明を加える。


「そう、指示を出す人には間違いない。ただ、彼はセレス軍全体を指揮する権限を持つ――民主化されたセレス国の平定役も兼ねた、総司令官だ」


「え? えっ? それって…」


「ああ。こんな場所で道草していていい人間ではないな。だがアズロ君の場合は元々特殊でな、現在名目上は司令であっても、極限にならねば動かない。普段はアズロ君の部下が軍を統率しているんだ」


「そうそうー、僕は師団長より上に引っ張られても常駐なんてしないよって言ってあったからね。議長さん…国の偉い人が許してくれてるから、いいのいいの。セレスにはたまに帰ればいいから。道中はしっかり案内するから安心してね」


微笑んだアズロの態度はどこまでも緩く、フィンは少しだけ後悔した。


(昔のアズロ君は生真面目だったようだが…これはあれだな…誰かしかの悪影響を……)


「あら、そうなのですか? ありがとうございます、同行いただけて嬉しいですわ」


話の内容は理解したであろうに、ネウマはにこにこと笑ったままで。


とても助かったものの、珍道中になりそうだ、と。

フィンは、前途多難な予感に苦笑いするほか無かった。




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