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アナスタシアⅥ
アナスタシアは薄暗い森の中を駆けていた。
だが、その速度は彼女の最速には程遠い。最低限の活性化しか出来ていないからである。
理由は相手に気付かせないようにする為。思惑はうまくいった。ドロッセルの展開した寒熱天衣の境界ギリギリにいる敵は、周囲に全く気を配っていない。
アナスタシアは彼の背後から襲いかかった。
ほんの一瞬だけ、最大活性化し、更に変幻刀改を起動させ、掌から刀身を生やして腕を振るう。
その瞬間に彼の頭部は胴体から切り離された。
クルクルと回る彼の頭は、“何が起こったのか分からない”といった惚けたものであった。
彼の絢豪装甲のバイタルカラーはブラックに変わり、彼の襟首を中心の真っ黒な球体がジジジジと音を鳴らしながら展開する。
頭部と胴体を飲み込んだ黒い球体は、小さくなり消える。
転移魔術によって審判団の元へ行ったのだ。今頃は生体保護液に浸かっているだろう。すぐさま治療をすれば、相当運が悪くない限りは死にはしない筈だ。
頬についた返り血を拭ったアナスタシアは、機械のように淡々と口を開いた。
『ハジ、獲ったよ』




