チドリⅠ
ユニコーン・レギオンは人数が二十人と今期最少の人数である。その為、寮には空き部屋が沢山ある。とある空き部屋は家具を全て取り払い、代わりに机と椅子を置いてミーティング専用の部屋に改装されていた。
部屋の中は暗く、黒板くらいの大きさの音光硝板が壁に掛けられている。チドリがそれに手を触れ、魔導力を流し込むと淡く発光し、リンドヴルムの選手の情報が写し出されていた。
レギオン・マスターのチドリと、翌日出場するレグリア、ディスト、ジュールとロゥランの四人が、試合に向けてミーティングを行っていた。
一通り資料に目を通すと、チドリは、
「何か気がついた事のある者、いるか?」
チドリとレグリア以外の三人は言葉数が少ない。あまり良い雰囲気ではないなと思った。
レグリア以外の三人は実戦経験が無いせいか、緊張しているようだ。試合は翌日だというのに今からこれでは先が思いやられた。
対して飄々とした声が飛んでくる。
「これと言っては」
声の主はレグリア。
彼女はサラサラとしたショートカットの黒髪と褐色の肌を持ち、キラリと光る八重歯が特徴的だ。
身長も体重も女子の平均以上なのだが、“身軽”を体現したような身体能力が売りの“嵐脚の魔女”である。
この場で実戦経験があるのはチドリとレグリアくらいなので、対抗戦を勝ち抜くには彼女を頼りにしなくてはならない。
チドリはレグリアと視線を向け、もっと何か言うように促す。
不満そうに唇を突き出したレグリアはオーダー表を見つめながら、
「それにしてもチドリの予測は大当りじゃん。あたし絶対怪物が出てくると思ったぜ」
「うん? 少し考えれば分かるだろう?」
「うは、やな言い方」
静けさを嫌ったのか、レグリアは椅子の上で前後に揺れギシギシと音を鳴らす。だが、重苦しい空気は変わる事がなかった。
リンドヴルムは第一節と第二節を棄権していた。柔軟性が持ち味であるセレクト式でオーダーを組んでいたらこうはならないだろう。あとは第三節に出場してない戦闘手を確認すれば、オーダーの予測は可能だった。
レグリアはオーダー表に赤鉛筆で丸をつけ、
「これなら予定通りの作戦で行けそうだな。狙うのは、このハジって奴からでいいよな? こいつが一番弱そうじゃん」
弱い戦闘手から狙っていくのは戦いの基本
ユニコーンが集めた資料の中に、ハジが実力者であると示す物はなかった。と言うよりもまともな資料が手に入らなかった。
資料だけ見たレグリアが、彼が弱いと判断するのはおかしくはない。
だが、一度対峙したチドリは違う。
ハジの姿を見たのは一分にも満たない時間、それでもチドリの背筋に冷たいものが流れ落ちるのに充分だった。
あのキリキリとした雰囲気が、魔術師のモノと少し違う。チドリはそう思った。
「そうだな、最初に叩きたい。出来る事なら彼には四人がかりで仕掛けろ…… レグリア?」
チドリはレグリアの瞳をしっかりと見て、
「たのむ」
チラリと部隊員を見たレグリアは、意図を汲み取ったらしく親指を立てて、
「任せなさい」




