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誰が為の魔導技術  作者: 白牟田 茅乃(旧tarkay)
汽車に揺られて……
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シャロンⅡ

 帝都ハウシュカは西岸側と東岸側とで、だいぶ街並みが違う。

 西岸は歴史的な建築物が多く、何と言っても宮殿があり、中央省庁の庁舎もほとんどがこちら側にある。石造りや煉瓦造りの建物が多い、どこかおとぎ話を連想させる街並みだ。

 対して東岸は、近代的な鉄筋コンクリートで出来た建築物ばかりだ。多くの商店もこちらにあり、大通りにはブティックが並ぶ。

 本来、服を買いに行くなら東岸側だが、魔導絡みとなると話は別だ。

 西岸一号通り。

 東岸とをつなぐハウシュカ大橋から、皇帝が座する宮殿までつなぐ。そのため宮殿通りとも呼ばれる大通りだ。この通りは西岸には珍しく、幾つもの商店が並んでいる。

 当然のようにどの店も高級店ばかりで、大抵は紹介も無しには入店することも許されない。

 シャロンはその中の服屋に、ハジを引き連れて訪れた。

 上流階級御用達ということもあり、店内に庶民が着るような背広など置いてなく、タキシードやモーニングばかりだ。


 溜息を漏らしたハジは、

「うぉ、これまた高そうな店だな。シャロンってほんとに貴族なんだな。見えないけど」

「まぁ、実際、すごい貴族だと、向こうから家にやってくるの。しかも店主が」

「やってくる?」

「そうそう、新作が出来たからって、車一杯に服を乗っけて。商魂たくましいといかなんというか。」

 店内を物色する間も無く、店員が声をかけてくる。


 ビシッとスーツを着込み整髪料でガッチリと髪を固めた壮年の店員は、深々と頭を下げて、

「いらっしゃいませ、フランベルゼ様」

 シャロンはかいつまんでハジを紹介し、夕方までに魔導学校の制服を用意してほしいことを伝える。


「お任せ下さい」

 店員は懐からメジャーを取り出しハジの身体に当てて行く。ハジもされるがままだ。


 それを見てシャロンは少し驚いて、

「一から作るの?」

 てっきりシャロンは出来合いの物を裾上げする程度だと思っていたがどうやら違うようだ。


 店員は手を止めることなく続けながら、

「はい、全てオーダーメイドが当店のモットーですから」

「いつ頃できる?」

「三時間ほど頂ければ、ただ心苦しいのですが……」

「至急料金でしょう?」

「恐縮です」


 本来、服を一着仕立てようとすれば二週間はかかる。それをたった三時間で済ませようというのだから、高くつくのは当然だろう。それをわかっているからか、店員の言葉には申し訳なさなどなかったし、むしろシャロンの方が心苦しい。

 いっそ別の店に行こうかとも思ったが、ミレーユに渡されたメモにはここで買うように指定されていたので、仕方が無い。きっと門出を祝うに、半端なものを用意したくなかったのだろうとシャロンは思った。


 ものの数分で採寸は終わり店員はハジから離れ、

「採寸は完了しました。お疲れ様です」

「ご苦労様」

 シャロンと話をしている間に手際よく採寸を終わらせた店員は、それをメモした紙を別の店員に渡した。


「それで? 私の制服は?」

 シャロンにとってはこちらの方が重要だ。本当なら今日は、ここで制服を受け取ってそのまま入寮するだけだった。


「はい、ご用意できております」

 また別の店員が厚紙で出来た箱を持ってやってきた。


「ここで着ていっても?」

「もちろんでございます」

 店員は身体を斜に構え、試着室を手で示した。


「そう」


 そう言ってシャロンは試着室に入って行った。

 女の着替えは時間がかかるのが世の常だが、シャロンにそれは当てはまらない。

 一分ほどで試着室をあとにする。

 それはブレザーとスカートだった。白と紺を基調とした清潔感のあるものだ。スカートはウエストのゴツいベルトで留めるラップスカート。タイトスカートより動きやすいのは良いが、不用意に足を上げると太ももどころか、下着まで見えてしまう構造なので、気が気でない。

 ワイシャツに紺のリボンタイ。ブレザーは二つボタンで左胸に魔術協会のエンブレムが付けられている。ブレザーの下にはベスト、これがコルセットのように腰を絞るため、窮屈に感じるが、身体のラインの出るその仕立ては、シャロンの美しい肢体を引き立たせた。本当ならこれに専用のヘッドドレスを付けるのが正式な物だが、道中邪魔になること請け合いのなので、今は付けていない。


「如何でしょう?」

 窮屈、というよりかは動きづらい。正装として通用する物なので、動きやすさよりも見栄えを重視しているので仕方ない。


 すぐに身体の方が慣れると諦めて、

「まぁ、良いんじゃない? ねえ?」

 シャロンは何気なしにハジにそう訊いた。


 特に関心なさげに、

「うん、キレイキレイ」


 女性の身なりを聞かれたらそう答えれば良いと、誰かに聞いたのだろうとシャロンは思った。壊れたレコードのようにハジはキレイと繰り返す。


「もちろんで御座います。よくお似合いでございます」

「そう? じゃあ具体的にどこがキレイ?」

 ハジを揶揄うつもりでそう言った。


「え? ……スカートがヒラヒラして良いよね?」

「やらし」

「はい、フランベルゼ様の美しさを引き立てるために当店の職人たちが腕によりをかけ仕上げました」

 キッチリ店のアピールをするところが抜け目無いものだなとシャロンは思った。

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