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誰が為の魔導技術  作者: 白牟田 茅乃(旧tarkay)
知っている事、知らない事
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アナスタシアⅣ

 アナスタシアはハジの事がかなり好きである。

 と言っても恋愛感情とは遠いところではある。

 アナスタシアは自分の暴力的な言動が、周囲から疎んじられていることを知っていた。スキ有らば暴力を振るい、問題があればとりあえず殺人を持って解決しようとする節がある。

 自身の異能の特性上、周囲の人間が自分に対してドン引きしているのを知っている。かと言って、簡単に自分の有り様を変えることができるほど、アナスタシアは器用な人間ではない。

 結局、自分から人とのつながりを断ち切っていくのが常だった。

 だがハジは違った。

 アナスタシアの攻撃的な言動自体を呆れつつも、ちゃんと付き合ってくれる。それが心地よくてたまらなかった。

 だから今、ハジの意識がドロッセルにベッタリなのが不満で仕方なかった。

 常にドロッセルの見える位置にいて、何かあれば駆けつけられるようにしている。

 口では厳しいことを言っているようで、アナスタシアからして見れば相当甘やかしているのが手に取るようにわかった。それはそれで良いのだが、アナスタシアは自分に構ってもらえないのは納得できない。気を引きたくて敢えて好き勝手に振る舞う。


 崩れた建物の中は、ついさっきまでは小卑鬼ゴブリンの巣であったが、今では住人は一体もいない。

 返り血で真っ赤になったアナスタシアは小卑鬼ゴブリン七体のバラバラ死体を踏みつけて、

「ハジ、見て見て、全部やっつけたよ」

「すごいすごい、だから今度から勝手に動くのはやめような」

 ハジは懐からハンカチを取り出し、アナスタシアの顔についた血を乱暴に拭う。眉間に皺の寄ったその表情は、怒っているようだったが、心配の裏返しなのをアナスタシアは分かっていた。


「俺たちは今、部隊チームで動いてんだから、ちゃんとそのことも勘定に入れてくれ。いいな?」

「えへへ〜、了解です」

 アナスタシアはにやけた顔で敬礼する。


「……本当にわかってんのかなぁ」


 ハジはため息をついてそう言った。

 呆れはあっても、見放すつもりもない。そんな感情の乗ったため息だ。


「ハジ、ドロッセルどう?」

 ハジは両手を腰につけ天を仰いで考える。


「能力的には問題ないんだけど、精神的には大問題だからな」

「じゃあドロッセルはクビ?」

「どうかな、本人はやりたがってるし。精神ってある時突然変わったりするから。少なくとも危険種相手に攻撃できるくらいには、心構えがあるみたいだけど…… 人間相手にどこまでやれるかなぁ」

 ハジはカクッと首を曲げ、下を向く。


「ははぁ〜、隊長は大変だ」

「……言っとくけど、ドロッセルだけじゃなくて、お前の最終試験でもあんだからな? そろそろ自重しないと、戦術長シャロンに言い付けるぞ」

「おぅふ、わかったよ」


 ハジが本気で言っているのがわかった。

 

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