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誰が為の魔導技術  作者: 白牟田 茅乃(旧tarkay)
知っている事、知らない事
36/63

ドロッセルⅡ

 ハジ隊は昼の大休憩ののち、再び旧市街を進む。予想していたように、徐々に危険種と遭遇する機会は増えていった。

 ドロッセルの立っている通りの向こう側から、馬鹿でかいカエルがやってくる。ウシクイウシガエルという名前の危険種だ。名前の通り、牛を丸呑みするほどでかいウシガエルである。ピョンピョンと跳ねることはなく。地面に腹をこすり、両手を忙しくばたつかせ、這うように動く。

 遠目では愛くるしい挙動だが、その巨体揺らし、猛烈な勢いで走っているのがわかる。


『ゴッメーン、ドロッセル、一匹そっち行った』


 交信板チャネルボードからアナスタシアの気の抜けるような軽い声が響く。


紅なる灼熱レッドエクスプロージョンッ!!」


 ドロッセルは手製の杖を掲げ、異能を発動した。

 小さな紅い球を無数に撃ち込むが、粘液に覆われたウシクイウシガエルの体表は、黒く焦げはするものの、勢いが落ちることはない


「ええぇぇ! なんでえぇ?!」


 徐々に大きくなっていくウシクイウシガエルの姿は、ドロッセルの眼には死神か何かに見えた。

 ドロッセルは足が竦んでその場から動けない。

 頭にかぶった三角帽子の唾を掴み、その場に丸くなる。

 ウシクイウシガエルが大きく口を開け、その中からタップリと唾液の付いた舌を伸ばす。

 それがドロッセルに触れようという時にハジの高虎ハイドラが舌を斬り落とした。


「ゲゲェェェェエエェェッッ!!」


 ウシクイウシガエルは悲鳴を上げた。

 ハジは飛び上がり、ウシクイウシガエルの頭に着地すると、首の後ろを深く斬り裂いた。すると、ウシクイウシガエルは動かなくなった。

 返り血がハジの豪繊外套アラクネ・マントを汚した。


 ハジはすぐにそこから飛び降り、ドロッセルに駆け寄り、心配そうに、

「大丈夫か? 怪我は?」

「……平気です」

「なら立つ」


 ハジはドロッセルの手をとって強引に引き上げる。

 そうされるまで、ドロッセルは自分が尻餅をついている事に気がつかなかった。

 ハジは交信板チャネルボードの先のアナスタシアを叱りつける。


「アナスタシアッ! 前衛だろうがッ、簡単に抜かれてんじゃねえよッ!」

『ごめんなさい、なんか楽しくなって…… うっかり』

「やることはやれ、面白がるのはそのあとな」

『了解ですッ』


 バサッと衣摺れる音がする、おそらく敬礼でもしているのだろう。

 ハジはため息をついて、ドロッセルに向き合う。


「お前も一々脚を止めるな、ヤバイと思ったらその場を離れろよ。具体的には前衛手おれの方に来い」

「逃げ出すなんて出来ません、みんなの迷惑になります」

「死なれた方が迷惑だって」

「……」


 無言のドロッセルに対して、ハジは頭をガリガリ掻いて、

「別に、お前を責めてるつもりはないんだよ。殺生事を嫌うのはおかしい事じゃないと思う。だからそれとうまく付き合えるようにならなくちゃな?」

「……はい」


 さっきからみんなの脚を引っ張ってばかり。立つ瀬がないドロッセルは弱く返事をした。

 ニトラからの音声が響いた。


『ハジ、次見つけたけど、と言うかもうアーニャちゃんが突入しているんだけど』

「あの馬鹿、せめてひと声かけろよ」

 ハジはそう言ってアナスタシアの元に走る。


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