シャロンⅦ
レギオンの全体ミーティングが終わると、直ぐに班ごとにミーティングが始まった。
リーリスの事とは別に、やる事がたくさんある。うまく気持ちを切り替えていかなければならない。
一番大所帯の戦術班は一階で行う。他の班に譲ってもらった形だ。
黒板の前に椅子を半円状に並べて、八人はシャロンを見つめる。
「改めて、戦術長のシャロン・エルフリーデ・フォン・フランベルゼよ、よろしく」
そう言って、少し頭をさげる。
するとパチパチと拍手が起こる。
シャロンは鳴り止むのを待ってから、
「今日は色々あったけどスケジュールは押し迫ってるから、心を切り替えていきましょう。さて、戦術班の仕事は“対抗戦で優勝”するために活動することなわけだけど…… それじゃあ、この中で、対抗戦について説明できる人いる?」
いくつか手が挙がったので、シャロンは試しに彼女を指名する。
「アーニャ」
「戦って、ポイントを取るんでしょう」
「間違いでは無いけれど、不適当。三十五点」
「ぎゃふぅ」
赤点をもらったアナスタシアは椅子からずり落ちる。
すると、くすくすと笑い声が聞こえる。
緊張の糸が少し緩んだ。
「他には…… じゃあニトラくん」
シャロンは一番小さく手を挙げていたニトラを指名した。
ニトラは背が低く、幼い顔立ちのせいか、中性的を通り越して女性的な印象が強い。ただ、エレンのような気色悪さはなく、自然な振る舞いだ、
彼は声変わりの終わっていないような軽い声色で、
「対抗戦。正式にはレギオン対抗魔導戦技評価会ですね」
その後もニトラは要点をまとめ説明した。
対抗戦は魔導学校予科生の能力を測り、適性を評価するためのものだ。
四月の頭から十二月の終わりまでの期間をかけて行われる。協会会長の言うところの蠱毒の正体だ。
基本的にはポイントの奪い合いで、最終的に最もポイントを獲得したレギオンが優勝となる。
ポイントを得る方法は主に三つある。
一つ目は総当たりのリーグ戦の結果。二つ目は夏と秋の戦技大会の成績。三つ目は座学の定期テストの個人成績。
リーグ戦は四体四の部隊による模擬戦で、週末に行われる。各レギオンと三回ずつ、全二十一回戦う事になる。
二つある戦技大会は、夏はレギオンメンバー全員参加のサバイバルマッチ。秋は個人トーナメントだ。どちらも優勝すると大量にポイントを獲得できるので、対抗戦全体の命運を分けることになる。
ポイントを取れる定期テストは年に四回ある。個々人の成績によってレギオンにポイントが入る仕組みだ。魔導学校の学生が勉学を軽視しすぎる傾向があり、改善を期待して設けられている感がある。
要点のまとまった、解説を聞いたシャロンは、
「結構、文句無しの解説だったわ」
「えへへ〜」
褒められたニトラはヘラァ〜と笑う。
やはり同い年の男の子には見えないなあ、とシャロンは思った。
「戦技大会と定期テストはまだ時間があるから、一旦後回しにします。ともかくリーグ戦の準備をしないと」
「具体的にはなんか考えてんの?」
三十五点のショックから早々に立ち直ったアナスタシアは、シャロンに向かってそう言った。
シャロンは肩をすくめながら、
「正直、今の段階では何も考えてません、あなたたちがどれだけ戦えるか分からないもの。と言うことで、明日あなたたちの実力を確かめるために、模擬戦をしてもらいます」
アナスタシアは少し嬉しそうに、
「明日。随分急だぁ」
「というか時間が無いのよ、何せ開幕戦は今週末だから」
今が火曜日の夜、初戦は土曜日。しかも学校側に提出する最初のオーダーは木曜日の十八時までに提出しなければならない。実質あと二日しかない。
「ということで、これを引いて」
シャロンは用意していたクジを取り出す。空き缶の中に木の棒が八本入っている。
「先に色のついたリボンがついてるから、同じ色の人が対戦相手ということで」
「一本足りなくない?」
「私は良いの、戦術長だから」
そう言いながらシャロンは中身を隠すため隙間を手で覆い、半円状に座る戦術班の前を順に回っていく。
残り二本、次はハジの番だ。
「はい、ハジ君」
「ああ」
ハジは少し迷ってから引くと棒の先には青いリボン付いていた。
残り一本
「はい、アーニャ」
アーニャが引いた棒にもハジと同じ青いリボンがついていた。
「悩む必要なかったな」
全ての組み合わせが決まった。各々対戦相手を確認し、視線を交わすとバチバチと火花が散る。
「ふふふ。ハジ、明日はズタボロにしてやんよ」
「……シャロン、模擬戦でなら脚の一つもぶった斬っていいんだよな?」
「ルールの範疇でならね」
ハジに限らず、その場の者はどこか嬉しそうだった。その中にはリーリスを斬ったハジに対して批判的だった者もいるが、戦う理由があれば戦闘手はここまで好戦的になれる生き物かと。シャロンは驚く。
「それじゃあ、明日十六時に戦闘準備をしてここに集合という事で、それでは解散」
椅子から腰を上げた彼らはみんな、戦士の顔つきだ。




