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第四話「朗報だ!」

気がつけば、俺は不思議な空間にいた。なんの景色もなく、感覚も重力すらも感じられない。自分が立っているのか浮いているのかも分からないような、そんな空間に。

「どこだ、ここは...」

辺りを見渡してもなにもない。

自分の頬をつねってみるが痛みは感じることはない。


「無駄だよ、そんなことしても」


突然どこからか低い男の声がして、さっきまで何もなかった目の前に誰かがたたずんでいた。

そいつは黒のジャケットに、まるでマジシャンが持っている様な印象的なシルクハットを深々とかぶっている。


「誰だ、お前は」

「まあまあ、そんなに警戒することないだろう。ねぇ、不動こころ君」

「!」

「僕の名前は夢魔。以後、お見知りおきを」

「何で俺の名前を...」

「いいじゃないか、そんなことは。それより泣き虫な君に朗報だ!」


そのまま、夢魔とか名乗った変な野郎は俺の方へ近寄ってきた。

思ったよりも背が高くて妙な威圧感があり、思わず後ずさりをしてしまう。

「だから警戒することないって。それに、僕をここへ呼んだのは君だろう?」


話が全く分からない。

夢魔?呼んだ?一体何のことだ。


「まぁ、分からないのも当たり前か。いいよ、一から説明してあげよう」

「何なんだ、おま...」

「まず僕は夢魔と言って、悪魔の一種だ」


夢魔はおれの言葉を遮って、自分のことについて話し始めた。


「夢魔というのは人間の夢の中に入り込み、その人間が眠る前に願ったことを叶える悪魔のことさ」

「なに?」

「そして君の願いが、今宵僕を呼び寄せた」

「なんだって俺のところに...」

「だって君は願ったじゃないか!深い悲しみの眠りにつく前に『泣き虫な自分が憎い。消し去りたいほどに』って」

「!」

「だから僕は今ここにいる。これで理解できたかい?」


いや、何を言っているんだこいつは!?どう考えてもあり得ないだろ!

それに、願いを叶えるってことは───


「俺が泣き虫じゃなくなる...?」

「That's right!いやはや、話が早くて助かるよ。さあ、君の涙を食べてあげよう!!」

「いや、どう考えてもおかしいだろ!そんなことあり得ない!!」

「あり得ないかどうかは、目が覚めたらわかることだ」


夢魔はそう言うと、俺の頭に手をのせる。

「やめろ!何なんだよ!」

抵抗しようとしても、まるで体に力が入らない。

ああ、ヤバい。意識が遠のきはじめる。頭がぼんやりとして、しっかり機能しなくなっていく。


「ああ、言い忘れていたことがひとつ」

ほとんど意識のない頭が、夢魔の言葉を必死に拾う。


「君が本当に涙を取り戻したくなったら─────...」


しかしそれは最後まで聞き取れることなく、俺の意識は消えていった。


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