表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瞬花終答  作者: 銀色捺夜
8/17

8

「行くぞ」


「は、はいっ。」


学校が終わると俺はすぐに教室を前園とでる。

好奇の目も浴びせ浴びせられたが、無視する。

ほどなくして、俺達は街まで歩いていく。

学校は比較的、中心地の近くにあるから歩く距離も苦にはならない。


結局、教室をでてから終始無言。前園の緊張はいっこうにほどけないので、後ろをかちこちと歩く彼女に話しかけた。

ちょうど朝にあった場所。


「お前、迎えは平気なの?」


「あっ!はい。えと、お母さんには、寄り道をしていくと伝えあるから、平気です!」


寄り道を許す。ということは彼女は昨日のことは親にも話していないらしい。


「ふーん。……にしてもあんた見かけによらずタフだよな。今日はてっきり、学校にも来ないと思ったよ。」


返事はない。

しかし、これは素直な感想だ。

昨日、見知らぬ男らに陵辱されかけたばかりなのだ。その傷が1日やそこらで癒えるわけがない。

なのに前園は、その恐怖を親にも打ち明けない。心配させたくないと思うこともあるのだろうが、彼女はたしか、親が世界的一流企業の社長、言えば途端に前園の今のこの生活は崩れるだろう。

だから彼女は、恐怖を抱いてでも、今の自由を選んだんだ。


だから、何も表さず振る舞ってきた前園を俺は、素直に驚いていた。


「タフなんかじゃないです。」


彼女がゆっくり喋りだした。


「私、本当はこわいです。」


俺は立ち止まり、振り返る。前園は今にも泣きそうな、だが凛とした表情でこちらをみていた。


「でも、あの、南月君が助けてくれました!えと、だから、あの……


平気です。と顔を伏せていった。

ただ事務的に、こちらの仕事を漏れないように口止めだけする予定だったが、気が変わった。

俺は歩きだす。

彼女は動かない。

もう一度振り返り、俺は言った。


―色々話すよ。よかったらついてこい。


不器用にそれだけ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ