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朝の日差しが眩しい。
結局、夜子の店から、帰ったあと、そのまま眠ってしまったようだ。
夏に近づいたこの季節。
蒸し暑い気温は不快だ。
だれていたソファーの横に、昨日使った警棒がある。
それをソファーの下に隠すと、昨日の無理な行動をともなわせた体は、フラッシュバックした記憶で、また震えていた。
全く、使い物にならない容れ物だ。
俺が望んで入った世界なのに、たった昨日のことだけで、俺はこんなに怯えている。
夜子に雇われて、数週間。
こなした依頼はわずか3つ。
どれも、命の危険は伴わない軽いもの。
でも俺の体は勝手に震える。
あの時以来、虚像と実像のようにわかれた俺は、割り切ってしまえば、まばたく間に全てを抑えられる。
その気になれば、昨日のカスも、なにもかも、ひびることなく簡単にこわせる。
何も怖れない。
と念じさえすれば、壊れてしまったオレの脳はおもった通りに震えも簡単にとめてしまう。
精神変革者
それが俺。
頭の中の理性と思考、精神を司る、海馬と前頭葉の以上発達。
自分でスイッチを切り替えればいつでも、俺は精神変革者としての思考能力と精神力を手に入れられる。
だが、俺はそれを使いたくない。
人間という証を保つためには、その力を使えない。
使ってしまえば、きっと全てに絶望する。
壊れた人間になってしまう。
何でもできる人間は退屈して、やがて狂気に走るから
一度だけ、スイッチをきりかえたことがある。
あの時手に入れた、万能感と、思考したことをやり遂げてしまう、虚無の精神力は、俺を何も持たない、全を侮辱する人形に変えてしまう。
だから使うのが、恐い。
だから慣れるのが、恐ろしい。
だから、俺は強くならなきゃならない。
◆
私は、ふわふわの羽毛のふとんのなかでゆっくりと伸びをする。
しんとくる冷気、12月の空気は、秋の名残もなくなって本格的に寒い。
目覚めのよく起きた私は、早く学校に行きたがる。
「う〜さむぃ〜」
でも今日は最後の日なんだから、せめて、いつもとおんなじように過ごそう。だから私はいつもと同じ言い訳をして、いつもと同じように、二度寝する。
少し、悲しいけど、南月くんや夜子さんともお別れだ。
あと、切鐘君やミキちゃんとも。
私は今日、いろんなことにであわせてくれた南高校を転校する。