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瞬花終答  作者: 銀色捺夜
14/17

14

     ◆


――日はとっくに沈んだ。


ただ風景がつながれている。

完全に日が沈み、街は人間のせわしないあかりと動きだけ、自宅へ歩く者も夜遊びに働く者も、まったく他人に興味はない。

前園と別れてから、俺は余分な回想をしていたようだ。

勝手に足は進み、後数分で事務所へつくだろう。せっかくだから続きを思い返す。



俺は着ていた学校指定のワイシャツを脱ぎ、長い黒髪の中小刻みにゆれる前園の服が破れ、むき出しになった白い肩にそっとかけた。

勿論俺はタンクトップを中に着ていたから、裸になったわけじゃない。

前園は俺のボタンを外す動作にかなり警戒したが、何もしない。

彼女が泣いて俯いたままなので、助けた手前見捨てられず、となりに腰を下ろした。周りを見渡すと草木で覆われたここからじゃ空も見えない。それに人目につきにくい場所だ。俺は警棒たたみ腰にさした。前園のすすり泣く声だけが空間に響く。俺はこういう場合何を言えばいいか分からない。知りたくもない。だから黙って傍らにすわるだけ。


そして、数分。


「…落ち着きました。」


彼女は涙の後がハッキリついた顔で笑いながらこちらをみる。精一杯の表現だろうが、笑えていない、むしろ泣きそうだ。

「…帰れるか?」

「……ハイ」

「送ってやる。」

「……ハイ」

俺は前園の手を取り、エスコートするみたいに丁寧なもんじゃなく雑なものだが、それで立たせた。

握った手は細くてやわらかい、力をいれたら折れてしまいそうだ。

俺はできるだけ弱くその手をひいた。前園は素直についてくる。後ろをみるが、俯いているのでどんな表情かは分からない。


破れた服に大きいシャツを羽織る少女、その手をひき遠慮なく進む男。

それはどこか滑稽で、好奇だった。


公園の外側に来る。この敷地は街の真ん中にある。たしか

「都市の中にも緑を」とかいう下らない開発事業でつくられた。遊歩道と中央に広場だけというつくり。円形をえがきながらあるので、一度円からでればそこには反対側には商店街、そして今俺達が立つ方向はそのまま中心街につながる。

なるべく前園をかばいながら、タクシーをひろった。

運転手は胡散臭い目でこちらを見たが、好奇心が勝ったように俺達を乗せた。


「どこまで行きますか?」

前園の家を俺は知らない。したがって彼女に答えを促すが、やっぱり帰れません。と言った。

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