表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/31

魂の支配者(02)

「千亜樹さん、わたくしたちの敵である天使たちとの戦闘について、もう一度説明させてくださいませ」


 対天使特殊戦闘部隊・鬼火に所属する輸送ヘリで菜々瀬は千亜樹に言った。

 菜々瀬が語る。


「天使たちの弱点は、頭部と心臓であると過去の戦いからわかっていますわ。首を切り落としたり、心臓を停止させれば、天使を殺すことができるんです」

「うん、菜々瀬ちゃん、あたしたち堕天使の弱点も首と心臓ってことだね」

「はい、そのとおりです。それから、わたくしの能力〈千里心眼パース・シーカー〉は、天使の心を読みとれません。遠くから、天使を観察対象にすることもできません。人間と堕天使だけに有効なんです。ですから、わたくしがどんなに天使に近づいたとしても、敵の天使能力を知ることはできないんです。天使の能力にご注意くださいませ」

「了解だよ、菜々瀬ちゃん。……駅前広場に、たくさんの人たちが倒れているのが見えるよ。逃げずに立っている女がひとりいる。たぶん、あいつが天使ね」


 ヘリ操縦士の男が、まえを見たまま、


「こんな高さから夜の地上が見えるのか。すごいな、堕天使は」


 千亜樹が、ほほえみながら操縦士に答えた。


「この戦いが終わったら、おじさん、あたしと腕ずもうしてみる?」

「腕ずもうもオジサンもかんべんしてくれ! オレはまだ28歳だっ」


 菜々瀬は、初めての戦闘直前にリラックスしている千亜樹を見て、安心した。


「千亜樹さん、説明は以上です。なにか質問はありますか?」

「質問はないけど、……ひとつだけ、ゆずれないお願いがあるの」


 菜々瀬は沈黙した。

 千亜樹の左眼が、小さな少女をまっすぐに見つめている。


「もし敵が連城火織だったら、あたしに戦わせてほしい。菜々瀬ちゃんは支援にまわってもらいたいの。連城火織だけは、あたしがこの手で首を落としたいの」

「……わかりました。連城火織は、千亜樹さんにおまかせします」


 菜々瀬は、千亜樹の瞳から、青白い炎のような強い想いを感じていた。

 操縦士が堕天使ふたりに声をかける。


「お姫様たち、指定の場所についたぜ。ほんとうにこの高さから、パラシュートなしで飛びおりるのかい?」

「はい、これが、いちばん早く行ける方法だから。菜々瀬ちゃん、先に行くよ。これ以上、もうだれも殺させないっ」


 菜々瀬がヘリの扉をあけた。

 セーラー服の眼帯少女――桜木千亜樹が夜空へ跳んだ。

 千亜樹の眼下に、横浜ランドマークタワーの屋上があった。地上196メートルのタワーより、はるか高い空からダイブしたのだ。 千亜樹は、頭から矢のように降下していく。

 体を大の字に広げ、全身で風圧を受けとめた。

 ポニーテールが龍の尾のように空におどる。

 滑空を続ける。

 風が体をすりぬける。

 タワーが近づいてくる。

 屋上をとおりすぎると、タワーの壁を地面にむかって走り始めた。

 ほぼ水平に飛んだ。

 垂直落下のエネルギーを、堕天使の脚力で無理やり横方向に変換したのだ。

 別のビルの壁に着地して下方向に走り、さらに別のビル壁へ飛びうつる。

 落下速度が減速していく。

 千亜樹はビル壁を走り続ける。

 地面がせまる。

 激突寸前で壁からVの字に跳んだ。高度があがる。みなとみらい『動く歩道』の屋根を滑走する。

 屋根の終端がせまる。

 飛んだ。

 弧を描いて降下する。――殺人天使が待つ決戦の地へ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ