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不死鳥の乙女  作者: ren
精霊の花嫁
51/87

トランプ

「はいどうぞ」


「……すまない」


 またしてもピアの家に招かれたオルは、ソファに座って彼女が淹れてくれた紅茶を飲んでいた。


「髪色の変な女に化けてた炎の悪魔とその連れが捕まったって聞いてたんだけど。 無事だったんだね」


「お前結局、どっから来たんだよ」


「……」

 

 オルはしばし迷ったが、帽子を脱ぎ、何も言わないままもう一度被りなおした。


「驚いた……」


「本当にこの国のやつじゃなかったんだな。 じゃあどうやって逃げ出したんだ? 屋敷に連れてかれたんだろ?」


「……今はその屋敷で、ブリリアントの世話になっている。 一応、知り合いなんだ」  


 あっさりそう言ったオルに、ピアは食べかけのクッキーをぽろりと落とした。


「え。 嘘だろ」


「じゃ、じゃあお前、花嫁様は――」


「……ブリリアントは無事だ」


 オルの一言で、ラリーとピアはホッとして互いに手を取り合った。


「花嫁様は無事なんだ!!」


「だから言っただろ、花嫁様は大丈夫だって!!」


 二人の喜び様は凄まじく、今にも踊りださんばかりだった。


「教えてくれてありがとな、オル!」


「本当、ありがとう!」


「……」


 しかし何も言わないオルに、二人は訝しげに聞いた。


「どうしたんだよ?」


「……何も聞かないんだな」


 静かにそう言ったオルに、二人は顔を見合わせた後呆れた様に言った。


「え、言いたかったの?」


「……そういうわけじゃないが」


「お前だって色々あるんだろ。 花嫁様の無事だけ知れちゃ、俺達は別に詮索なんかしねえよ」


「……そうか」


「けど代わりに、私らに聞きたいことがあったら何でも聞いて良いんだよ」


「……は?」


 ぽかーんとするオルに、ピアはくすくすと笑ってこう言った。


「あんた、さっきから聞きたくて聞きたくて仕方ないみたいな顔してるよ。 ふふ、違った?」


「……」


 図星を指されて、オルはしばし固まった後かりかりと頭を掻いた。


「……ああ。 教えて欲しいことが山ほどある」


「遠慮すんな、何が聞きたいんだ?」


 初めて会った時の愛想悪さなど嘘の様に、ラリーは笑顔で言った。


「……ブリリアントのことを。 この村における彼女の役割は何なのか。 何故村中からそこまで慕われているのか」


「ほう」


「ふーん」


 二人は再度、顔を見合わせるとこう言った。


「長い話になるけど、時間は大丈夫かい?」


「……頼む」


 オルの言葉に、ラリーはぐいっと紅茶を飲み干して語りを始めた。


「じゃあまずは、緑の国が出来たところから始めようか」





「……ま、参りました」


「やったー! また私の勝ちだね、お姉ちゃん!」


「くっそー!!」

 私は握りつぶさんばかりにしていたトランプの束をポイッと投げると、またぐちゃぐちゃと混ぜ始めた。


「悔しい、もう一回!」


「えーまたー?」


「勝つまでやるんだから!」


「次で五十回目何だから……」


 そういいつつもミラは、ぽろぽろこぼれていくカードを拾っては器用に切ってくれていた。


「はい、お姉ちゃん」


「ありがとう」


 私はミラからカードを受け取り、早速ゲームを再開させた。


 ――こうしていると、なんだか懐かしいな。


 ぱらりとカードをめくりつつ、私はふとそんなことを思っていた。


 ――私なんか相手にならないって知ってるのに、絶対手加減なんてしなくて。 真正面から潰しに来てたんだよね。 勝負にならない勝負して、楽しいって聞いたこともあったよね。


『でも、レナは私が手を抜いたら嫌でしょ? 私はレナと一緒にいれば、それで良いの。 さ、もう一戦やりましょうよ』


「次、お姉ちゃんの番だよ!」


「……え? ああ、ごめんごめん」


 私は慌てて、カードを一枚選んで山に乗せた。


「ねえ、ミラ」


「何? お姉ちゃん」


「……トランプ好き?」


 今さら何を聞くのかと自分で思いつつ、私はそんな当たり障りのないことを聞いた。するとミラは、にっこり笑ってこう言うのだった。


「お姉ちゃんとトランプするのが好き!」


 全く照れもせずにそう言う彼女に、私は自然と笑みを浮かべていた。


「私も好きだよ、ミラ」


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