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不死鳥の乙女  作者: ren
精霊の花嫁
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木の葉の舞

非常に遅くなって申し訳ありませんでした。堕落ライフ満喫中のrenです。またぼちぼち頑張りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。泣

 次の日より早速、ブリリアントによる修行が始まった。


 彼女に言われ、私たちはそれぞれの武器を持って円形の広場の様なところ――闘技場と言うらしい――に集まっていた。


「お待たせしましたわ」


 程なくして現れたブリリアントは、普段より簡素だが十分豪華なドレスを纏ってい。


「それでは始めましょうか」


「……え?」


 戸惑っている私たちの前で、ブリリアントは右手にはめている指輪をかざして見せた。


「私は守護精霊エントの力を、この指輪を通して行使致します。 今はそのほとんどが使えなくなっていますが、皆様のお相手をするぐらいなら支障ありませんわ」


「それで……。 僕達はこれから何をするのでしょうか」


 見るからに動きにくそうな服装のブリリアントに、イザムは困惑しつつ聞いた。


「お兄様方にはこれから、求神の力を引き出す練習をして頂きます。 ですがその前に、現状を教えて頂きたいと思いまして」


「……俺達は互いに、戦えば良いのか?」


 オルが二つの短剣をそれぞれの手でくるくると回しながら、ブリリアントに聞いた。すると彼女は、可愛らしく微笑みながらこう言うのだった。


「いいえ。 お相手するのは勿論、この私ですわ。」


 ――うわー! ま、さ、か!


 私は何となく予想していたとはいえ、やはり突っ込まずにはいられなかった。昨日確かに、私はエントの力の凄さを見た。だがブリリアントは、どう見ても戦闘向きには見えなかった。しかも今はその“求神”の力さえ、封じられている言うのに何が出来ると言うのだろうか。


 しかしブリリアントは、そうは思っていなかった様だった。


「まずはレナ様、お手合わせお願いしますわ」


「……!」


 ブリリアントに名指しされた私は、ぎゅっと剣を握りしめた。緑の国に入って以来、触れることすら無かったこの剣。久しぶりに動くのも、悪くはないはずだ。


 ――やるからには本気で行かせて貰おう、怪我させない程度に。


 さっと両手で不死鳥の剣を構えると、私はブリリアントを見据えた。


「お願いします!」


「いつでもどうぞ!」


 ――はっ!


 私は気合十分、ブリリアントに向かって駆け出した。彼女相手に勝負をいたずらに長引かせるつもりなどなく、最初から全力だった。


 だが――。


「――っ!!」


 思いっきり振り切った剣は、すかっと何も無い空間を切り裂いた。


「レナさん、完全に本気ですね」


「……ああ。 あれは当たったら無事じゃ済まないな」


 ひそひそと話す二人の声を聞きつつ、私はたらりと汗を流した。完全に捕えていたと思ったブリリアントは、切っ先のわずか先で佇んでいた。


「うふふ」


「くっ!」


 じっとこちらを見ているブリリアントの目がこちらを挑発している様で、私は剣を構え直した。そしてそのまま一線、二線、攻撃を加えていく。だがそのどれもが、彼女を捕えることが出来なかった。彼女は宙を舞う木の葉のように、はらり、はらりと剣をぎりぎりのところで避けていく。


 ――な、なんで……!


「……何をしているんだレナ」


「レナさん、不死鳥の力を使わないと!」


 ――……!


 私は今更の様に、不死鳥の剣に力を込めた。


「ふ、不死鳥の――」


「精霊の木!」


 ブリリアントに向かって繰り出した剣は、しかし振り切られることは無かった。何故なら私の剣は、何かによって絡め捕られたからだ。


「な、何これ!?」


 剣を押さえていたのは、私の背後から突然生えてきた一本の木だった。その木から生える枝が、まるで腕の様に私を捕えていたのだ。


「私は樹木の力を操る、精霊の花嫁ですわ。 レナ様に火を放たれては困りますから、封じさせて頂きました」


「う、動かない……!」


 一見細く見える木なのに、私はぴくりとも動くことが出来なくされていた。


「勝負ありましたね」


「……ああ」


 ――……っ!


「うふふ。 レナ様、ありがとうございました」


「……ありがとうございました」


 私が力を抜くと、木も自然にシュルシュルと腕を縮めさらに土へと還って行った。


「では次は僕の番ですね」


「……ああ」


 ――くっそー!!


 ぎりぎりと歯を食いしばりながら、私は残りの二人の勝負を見ていた。しかしやはりというか何というか、ブリリアントは凄かった。イザムの作り出した水龍はことごとく粉砕され、オルの雷は効かなかった。その後三人同時に彼女に挑んだが

結果は同じだった。圧倒的な力量差に、私たちは息を乱しながら立ち尽くすしか無かったのだ。


「うふふ。 一度休憩を取りましょうか、お兄様方」


 いつも通りにっこりと笑うブリリアントの声で、私たちはその場にへたり込んだのだった。


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