後悔
「……私は一度決めたことを、変えるつもりはない」
静かに、だが反論を拒絶する様に彼女は言った。だが私も、ここで引き下がるつもりはなかった。
「――あなたは間違ってる!!」
「言葉には気を付けろ、白蛇の巫女よ。 私の何が間違っているというのだ」
真っ向から見据えられて、私の心は今にも折れてしまいそうだった。でも――。大切な友達を亡くさない為に、私には彼女に抗う義務があった。
「誰かの犠牲によってしか成り立たない世界なんて、そんなの――絶対おかしいよ!」
顔を真っ赤にし、拳を握りしめて放った渾身の思いはしかし―― 彼女には届かなかった様だ。何故なら彼女はただ素っ気なく、こう返してきたからだ。
「“苦神”とは、民の苦しみを背負うもの。 これしきのことで狼狽えるな」
「で、でも……レナだって、本当は――」
「“再生の儀式”は予定通り明朝に行う。 お前もさっさと寝て英気を養っておけ」
私の見苦しい最後の足掻きに被せて彼女は堂々と宣言し、話は終わりとばかりに彼女はさっさと去っていってしまった。
――もう彼女は止まらない……。
そう悟った私は、その場でただ泣き崩れるしか無かったのだった。




