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不死鳥の乙女  作者: ren
番外編
25/87

 その日の夜。日付もとうに変わり、世界が闇に包まれている頃――。


 寂れたパブ「骨と皮」に、謎の集団が訪れようとしていた。


「――よう、マスター」


「……遅かったな」


 その集団の頭領らしき男とパブの怪しげなマスターは旧知の仲とでも言うように、軽い感じで挨拶を交わした。


「へへっ! 昨日も遅くまで――いや今日の朝か? とにかく仕事だったんだよ。 本来なら今日は一日食って寝てるところだが、あんたがどうしてもって言うから来てやったんじゃないか」


 頭領はニヤニヤと嫌らしい表情を浮かべながら、腰にさしてある特徴的な刀を撫でて言った。彼らはいわゆる、盗賊だった。ここら辺の地域一帯で悪事を働く彼らは、残酷な手口で知られていた。


「……御託は良い。 さっさとついてこい」


 マスターはそう言うと、店の奥にある階段に彼らを導いた。


「で、今日はどんな獲物なんだよ?」


「男女の二人組だ」


「は!? たったの二人かよ!?」


 頭領はあからさまに、ガッカリした表情を浮かべた。


「そんな儲けの低い獲物、なんでわざわざ――」


「相手は薬師の少年と、護衛の少女だ」


「――!」


 大怪我を負うリスクが高い盗賊に取って、薬は必需品だ。しかし薬は非常に高価で、薬師は非常に稀少な存在だ。冗談半分でいつも、獲物にうってつけな奴らの中に薬師が交じってたらなーと言っていたのだがここに来てそれが実現したのである。


「……その二人は今?」


「いつもの様に、酒に眠り薬を混ぜている」


「……前みたいに、飲んでねえって可能性はないだろうな?」


「女の声で、不味いと言っていたのを確かに聞いた。 護衛――所詮は女だが――さえ寝ていれば、何の問題もない」


「……ふははっ」


 マスターのしてやったりの声に、頭領は思わず大きな声で笑ってしまった。しかし獲物は深い眠りについているはずなので、聞かれる心配はなかった。どうせ聞かれたところで多勢に無勢、今さらどうしようもないのだが。


 すでに勝利が決まっているかの様に、マスターと盗賊達は二階の客室前―― まさに二人が寝ている部屋の前で立ち止まった。其々に獲物を構えているのを確認した後、マスターは合鍵を取り出してガチャリと解錠して戸を大きく開け放った――。

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