第4話 風邪
……やっぱりこうなった。あのときすぐにお風呂に入っておけばよかった。
頭は雨で濡れていたから、とりあえずタオルで髪の毛は拭いたけど。
「はくしゅん!!! 」
このありさまである。
「全く……。大丈夫? 」
ほら言わんこっちゃないという顔をしている。
「大丈夫じゃないかも」
今僕はベットの中で横になっている。おでこに固く絞ったタオルを置いて。
「まさかこんなんで……。くしゅん!! 」
「あーもー。仕方ないなぁ。待っててね」
このくらい大丈夫だと思っていたけど、だめでした。風邪を引きました。今が休みの期間中でよかった。晴香お姉ちゃんと一緒ならなんとかなるかも。
あの後靴はびしょ濡れになるわ、冷たい空気で身体は冷え切るわ、今の晴香お姉ちゃんの家について一段落ついたからゆっくりしてたけど、急に悪寒がしてきて、温度計で体温を測ってみたら、熱がありました、という感じです。
「はぁ……、はくしゅん!! 」
……あれ、めまいもしてきた。これはいよいよいけないかもしれない。
「晴香お姉ちゃん……、頭の中と視界がぐるぐるしてる…… 」
「全く瑞穂ってば。祈梨がかわいいそうでしょ? 」
「晴香お姉ちゃん、もし祈梨が出てきたら祈梨に『ごめん』って伝えておいて」
「はいはい、伝えておくよ」
安心したせいか、急に眠たくなってきた。
「それじゃあ、僕は眠るね……。おやすみなさい」
後は祈梨がなんとかしれくれるだろうから、ここは祈梨に任せよう。
「おやすみなさい」
次第と意識が薄れて行く。その薄れる意識の中、何か妙に落ち着いて眠れる気がした……。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
ぼけーー。自然と目が冴える。目覚ましを付けておいたけど、目覚ましが鳴る前に目が冴えるような、あんな感じ。目を開けてみる。見慣れたような天井が視界に入る。部屋の内装が白か何かだったのは憶えている。シャープのような模様があったような、なかったような。そのあたりはあんまり憶えていない。目線をずらすと、布団か何かに丸まっていた。どうやらお布団の中みたい。
なんだかやけに身体が重たいので、お布団の中で手を閉じたり開けたりしてみる。うん、ちゃんと『私』が動かしている。
……あれ? なんでこんなに身体が重たく感じるの? それに身体が火照っているような気がするし。私は今置かれている状況が分かった気がする。
お布団の中に居たということは、純粋に寝ていたのか、それとも身体が火照ったような感覚があったから、風邪を引いちゃったのかな?うーん……。
とりあえず身体を起こしてみよう。身体を起こしたのはいいものの……、ふらついている。これは本当に風邪を引いているみたい。後で瑞穂に言わないと。
なんだか今まで居た部屋の内装と違う。廊下をふらつきながら歩いていて想った。板か何かに『晴香』という文字が書かれてある看板のようなものがかけられていたドアを見つけたから、ここがきっと今の晴香お姉ちゃんの家なのかな、と気付く。
ということは、瑞穂は無事晴香お姉ちゃんと会えたってことなのね。このあたりのことも後で瑞穂に聞いてみよう。
風邪を引いているせいか、今歩いている廊下が長く感じる。居間のような、灯りが点いている部屋を見つけた。今出せる精一杯の力でドアノブを捻って開けてみる。
『ガチャ』
ドアが開いた瞬間に、フラっときてその場に倒れこんでしまった。
「瑞穂!! 」
偶然、『ガチャ』と音がしたときに視線を部屋の入り口に向けていた晴香お姉ちゃんが私が倒れたと同時に声を上げた。
「ちょっと! 大丈夫? 」
私に駆け寄った晴香お姉ちゃんは、すごく心配そうな顔をしている。
「うん、晴香お姉ちゃん大丈夫だよ」
「……あれ? ……もしかして祈梨? 」
「うんっ! 」
部屋に入ってドアを閉めて、晴香お姉ちゃんにわかってもらえたことが嬉しかったので、ふらついて倒れたことをそっちのけでその場に立って元気よく返事を返してしまった。
「なんか違和感があったから誰かなと思ったけど……、変わってないね、瑞穂も祈梨も」
晴香お姉ちゃんが珍しくこんなことを言うからなんだか照れる。
「顔を真っ赤にするところも変わってないね」
「う、うるちゃい! 」
今は身体が火照っている上にいくら晴香お姉ちゃんでも恥ずかしいことを言われると余計に火照ってしまう。
「晴香お姉ちゃん、お腹空いた~」
「はいはい。でも、今の調子じゃおかゆね」
あっ、ばれてる。そりゃあばれるか。ふらついて倒れちゃったし。やっぱり瑞穂のせいかな。
「今はゆっくりしないといけないから、あんまり無茶しないでね? 」
「はーい」
初めてここまで長く書いたかも……。
サブタイトルの、表記の違いを修正しました。
そして誤字・脱字に気付きました