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第十七話「神話の始まり」

「それで取引の内容はなんだい?」


ネクロは不思議そうに語った。


「友をアークの幹部のところに送った。そこまでして君の求めているものはなんだい?」


ネクロは興味ありげにその質問をした。

幹部は神様的なやつに力を増幅されたり、

与えられているらしいからな。

そうでないやつとはかなりの

差があるだろう。だがまあ──


「俺は仲間を信じているだけさ.....」


その顔を見て、ネクロは自分の口元を手で覆い隠して、ニヤニヤしているのがわかる。


「いいですねー♪あなたはそんなこと絶対に思っていない。」


楽しそうに話しているネクロを睨みつけた。


「おー怖いですね。

でもそうでしょう?

あなたも私も人を信じれない。

なぜなら私たちと同じ目をしていますから♪」


いかにもわざとらしく両手を上げて、

僕を煽ってきている。


ダメだ。ここで相手のペースに乗せられたら、感情に流されるな。


「ああ、でもそれはリグレット部の人たちもですか。

いやー特にキョウさんとトウマさん!こちら側の才能がありますよ。」


「どうです?

私から勧誘しときましょうか?」


こいつと会話するだけ無駄だと俺は悟り、本来の話をすることにした。


「取引だが。そんだなあ.....」


【俺の神の名を教えてやるよ。】


「その代わり、お前らの神の情報を教えろ。」


俺はそう淡々と話したが、

ネクロは動揺している。

その証拠にさっきまでの軽薄さが消えた。


「嘘ですね。ありえません。

あなたたちの個人情報、成り立ちは

全部調べ尽くしています。」


冷や汗を掻きながらネクロはそう言った。


こいつは気づいているだろう。

俺だけは完全に調べれないことを。

でも自分の信じた神しか信じない。

いや信じれない。


だから教えてやろう。

俺を最も苦しめ、最も救った神の名を


【クロノス──時を司る神の名だ。】


「クロノス.....?聞き覚えがありませんね。」


でも、サクさんの力が常軌を逸しているのは確かです。

我が神に授かった訳でもなく、

強化してもらった訳でもない。


それなのに、世界を改変また死すらも変えるには相当ななにかがなければ到底、人である限りは無理.....


さっきサクさんが

『俺だけは完璧に調べれる筈がない。』

と言っていた。

恐らく過去に戻る能力のことを言っているのだろう。


.....しかしやつは一般の家庭で生まれも育ちも温室育ち。

.....いや、昔両親が原因不明の事故で死んだのくらいか。


そう言えばそのくらいの時、

彼の近くの小学校に、

黒い羽、黒い髪の少年が突如現れたと

一時期有名になっていたか.....


──違和感。

その時は確か調べに行ったがすでに

その少年は居なく。

警察も事件を調べていた。

しかし何の情報もなく、ネットでは


【神隠し。】


と言われていた。

恐らく、何かサクさんと繋がりがあったとしてもおかしくない。


でも、原因が何一つわからないのだ。

もしも、こいつがあの少年ならなぜ暴走した?

こいつは何故、親が死んだばかりなのにその学校にいた?


「サクさん、あなたは何者ですか?」


サクはニヤリとしてこう告げた。


【俺は神の代替品だ。】


今までの鬱憤を晴らすかのように

自分で考えろと言わんげに

私にそう告げた。


「それで、俺は俺の神の名前を教えた。だから取引としてお前らの神の情報を教えろ。」


【そしたら教えてやるよ。

もっと、もっと、

お前らの好きな神の情報を♪】


どうするか.....

正直、私は取引をあまりするつもりがなかった。

しかし、それをしても良いと思えるほどの情報をこいつは持っている

可能性がある。


いや、こいつがそれを言う保証は

どこにある?その後裏切られたら?

そう思考している時、サクさんは


「お前らの神、それは実体がないんじゃないか?

強いて言うなら、魂だけの存在、

概念と言ってもいいぜ。」


「ッ.....!」


なぜ!なぜ!なぜ!こいつみたいな

薄っぺらいやつが!

あの方を知っている!?

気味が悪い。

全てを知られてるかのようだ。


私も含めて、ウソをつくのに慣れたやつは本心が見えない。

なぜなら、たまに本当のことを混ぜてくるからだ。


嘘と本当。片方だけならまだわかる。

だが、こいつみたいに本当のウソを理解しているやつは非常に面倒だ。


彼は私の顔を見て、その情報が確かだと確信したのか、


「俺の神もそうだったからな。

どうだ?少しは信用できたか?」


「.....」


落ち着け。

確かにクロノスは実在していると

認めてもいいだろう。

だが取引に乗る必要は?


いや、しかし今後クロノスやサク

にでも共闘されたら、

こちら側がだいぶ厳しい戦いになる。


それに、私たちの神の情報は知られていても、戦闘に変わりない。


あわよくば、洗脳出来れば神である以上、私の解除の条件を満たすのは

難しいでしょう。


それに、情報に嘘があっても

私なら見分けられる。


「わかった。」


私は少しだけ覚悟を決めて、

深く息を吸い込み、


「少しだけ、話そう。

この世界を作った神の話を。」


*


昔、昔に宇宙に新たな魂が生まれた。

それは元から居たかのように、

元から存在していたかのように。

彼女はそこに居るのを認識した時、

一番最初に己の役割と名前だけを認識していた。


──その名はリペア。

役割は〇〇


(.....役割)


どうしても、その役割だけ思い出せない。

でも、あった気がする。

.....まあ、いつか思い出せるでしょう。


その後、リペアは宇宙を観測し続けていた。

何億年経っただろうか?

全方向にある星を見上げて、

ふよふよと浮かびながら、考えていた。

(私の使命は結局何だったのだろう?)


そんな、何度考えたかわからないことを

考えていた時、

黒い星が見えた。

それは周りのものを吸い込んでいく。


それを思いつきだった。興味本位だった。

リペアは太陽と月を作った。


星を大きくするのと、

黒い星みたいに吸い込む属性?みたいなものを、

太陽にも属性を付与させて、

私が出来る限り、熱を発せるようにした。


長い間放置していたら生命が誕生していた。

地球と言う惑星。

その星はリペアの知識欲や退屈を

忘れさせてくれた。


戦争、食事、家族、恋愛、

少しずつ知らないことが増えていく。

感覚に楽しさや面白さがあった。


いつの日かリペアは自分自身も

人族に混ざってみたい。

経験してみたい。

しかし、リペアは誰にも見てもらえない。

実体がないんだ。当たり前だ。


水溜まりを見ても何も映らない。

人族の目の前に来ても、手を振ってみても、無視される。


声の出し方も知らない。

いやそもそも喋れない。


長い年月を経て、

リペアは考えるようになった。

己が生まれた理由、どのように生まれたか。


何も出来ず、見守るだけ。

強いて言うなら、世界の干渉をして、楽しむぐらい。


人のように短い人生を楽しむことも

接することも何もかも出来ない。

それはまるで物語を見させられている感覚。


彼らの物語には私と言う存在は

映らなく。

見ることしか出来ないのだから。


──滑稽だ。

何もかもできる。

私がこのようなことで悩み、

人間たちよりも生きているという実感がないのだから。


私はいつも通り世界を観測していた。

ある日、山で迷子になっている、

一人の人間に会った。

私は相変わらず、


(どうやって帰るんだろう?)


と子供を眺めていたら。


「あのー道ってわかります?」


最初は後ろに誰かいるのか?と思い

後ろを見たが、案の定誰もいなく、

私を見て、声をかけていることがわかった。


どうやら、その子は霊感が強く私が見えたようだ。

私は声を出すことが出来ないので、

初めて人と話せた高揚感を抑えつつ

その子の話を聞きながら、家まで送った。


道端で聞いた話によると、その子の神社には〇〇が祀られている。


*


「そこから、リペアは人を知り、

心を通じ合っていく。って感じです。」


俺はそれを聞いて、点と点が繋がったような感覚に陥った。

あの神め!これが狙いだったのか。

俺は下唇を噛み、

忌々しげに何もないところを睨んだ。


「まあ、神社の名前は今では誰も知らないですけど。」


ネクロは自分が睨まれたのかと思い

そう軽口を言って、

早くクロノスの情報を言えと催促してくる。


「俺が今から、言う情報には確証はない。」


僕は前置きをして、そう話した。

今から自分が言う話を確かめながら。


【俺が祀っている神、

恐らくその神社だと思う。】


「へっ?」


と素っ頓狂な声を出して、口を少し開けているネクロがいた。


「え、いや、でも。」


否定の言葉を出そうとするが、

今のネクロには情報が足りなすぎる。


「わかりません。あなたが.....

何を考えたらそうなるんですか。」


ネクロは怯えているのだろう。

手を震わせながらイスから立ち上がった。


こいつは恐らく何百年も生きていた。

キョンシー。それは永遠とも思わせる時間で俺という存在は──


【イレギュラー】


俺はバグだ。

この世界の特異点。

最も異質な存在と言っても、

過言ではないだろう。


「なあ、ネクロ?死を味わってみないか?」


「は?」


ネクロは口を震わせながら立ち尽くす。


「いや、まだです。あなたの情報を

聞いてません。」


前のネクロならもっと慎重に行動していただろう。

しかし、こいつは俺が情報を喋ると思っているのか?


.....まあ正確に言えば喋れないのだが。

世界の修正力によって、制限されている。

そうだなあ.....

わかりやすくまとめると。


喋れることは

命令として、作戦として伝える

仲間や相手の能力を話す分には問題ない。


逆に喋れないことは

別世界のこと、僕の過去等。


ネクロに伝える情報は僕の過去に

繋がるから、

元から話すつもりなんてないし、

それに


【前にも言ったろ?

既に交渉決裂してんだよ♪】


俺は嘲笑うかのようにナイフを取り出して、

今だ困惑しているやつの首筋に当てて切断した。

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