第十九篇「仲直りしようと天愛の教室にやってくるも醜い罵り合いをするバカップルの追いかけっこが始まる話」
「そういえば俺、あいつのクラス知らないな……」
一年の廊下に来るとレイジは基本的なことを思い出す。
頭の後ろを掻く。
「まぁ有名人だし名前を出せばわかるだろう。ちょっとそこの人」
「はい?」
「人を訪ねたいんだが」
「はぁ……誰ですか?」
声をかけた少女に天愛のクラスを聴くとアッサリと場所が分かった。
仮にも人気チームの一員だけに同学年で知らない生徒はいなかったらしい。
昼飯の弁当を片手に天愛のいるクラスへと足を運ぶ。
「ここか?」
教室の前でクラスメートを捕まえ、天愛を呼ぶよう頼むと……
「っ……」
風を切るように小さな影がレイジの横を走り抜ける。
「ま、待てよ! 人が来たんだから逃げることは無いだろう!」
廊下を走る天愛の背中を追いかけようとレイジも走り出す。
「は、速ぁ……」
自称陽キャ一軍軍団の末席に座るだけあり天愛の足は想像よりも速かった。
階段まで走ると天愛の足は下の階を降りようと半ば飛び降りるようにジャンプしていた。
「おい! 危ねぇぞ!」
「うっ……」
華麗に着地し、振り返る。
「べぇ……」
「……むっかぁ!?」
振り返りざまあっかんべーする天愛にレイジの中の「コケにされた」というプライドが刺激される。
「待ちやがれ、このチビガキが!?」
「うっさいですよ! チビはお互い様でしょう!」
階段下に降りると天愛はレイジから逃げようと走り出す。
「待ちやがれこのガキ!」
レイジも天愛の背中を追って走り出す。
さっきと違い、「コケにされた」という怒りが爆発したのかレイジの足もかなり速くなっていた。
L字カーブになった廊下を天愛が抜けると数秒してレイジも曲がり角を抜ける。
「チッ……どっかに隠れやがったな」
人の消えた廊下に舌打ちをする。
幸い女子トイレの無い区域だから隠れるとしたら行き止まりまである三つの教室のどこかに隠れたのだろう。
「さっきのふざけた態度を謝らせるまで絶対にこっちも諦めんぞ……ここだ!」
一番前の教室の扉を開けて中に入る。だが、
「ここですよ! このマヌケ先輩が!」
「こ、こいつ!?」
扉を開けた教室よりもさらに奥の教室に隠れていたらし。
レイジが違う教室に入った隙を突いてまた元来た道を逆走して逃げだす。
「こ、このガキャァ……」
煽るように廊下を蛇行しながら走る天愛にレイジもさらに額の血管を浮き立たせる。
サクトと違い天愛の性格は自分と似通ってるだけにコケにされるのが余計に許せなかった。
「こうなりゃこっちも限界まで追いかけてやる! 追いかけて泣くまで謝らせる!」
天愛の小さくなる背中を追いかけながらレイジの足が廊下を駆け抜けていく。
「待ちやがれこのワガママ女がぁ!?」
「うっさいですね! このホモ!」
ぶっちん……
「このクソガキャァ!?」
たまに言われる「ホモ」扱いにレイジは余裕を失い怒りに任せて怒号を上げる。
もはや二人の中になぜこんな追いかけっこをしないといけないレベルのケンカをしてるのかは忘れてしまっていた。
つづく




